映画『ウッジョブ』は林業を救うか
『アナ雪』が話題を独占する映画界だが、邦画も負けてはいない。『スウィングガールズ』の矢口史靖監督の最新作『WOOD JOB!(ウッジョブ)神去なあなあ日常』が10日に全国公開、第1週の興行成績は『相棒 劇場版3』に次ぐ6位というまずまずのスタートを切った。「林業」をテーマにした笑いと感動のストーリーで、林業関係者や地方の期待も背負っている。 ■プロの林業家も「泣かせる」 都会っ子の18歳・勇気(染谷将太)がひょんなことからコンビニもない山間部の村で林業に従事することになり、嫌々ながらも村の人と自然に囲まれて成長し、林業のよさに気づく…というストーリー。三浦しをんさんのベストセラー小説を原作に、矢口監督が丹念な取材でリアルな現場を再現したと、公開前から話題になっていた。実際に映画を鑑賞した林業家は…。「泣きましたよ。ツッコミどころがないわけではないけれど、大満足でした」、と余韻をかみしめるのは愛知県新城市で林業に従事する田實(たじつ)健一さん(37)。自身も10年前、映画で取り上げられた「緑の雇用」制度をきっかけに名古屋市から新城市(当時は鳳来町)に移住したIターン組。いきなり現場に入らされて戸惑った経験を、映画の主人公にダブらせた。 「同期は6人いたんですが、半年もたたずに4人がやめてしまいました。作業がキツイのはもちろん、当時は日当が低くて『割に合わない』という感じ。ただ、労働条件は地域や勤める会社によってぜんぜん違う。映画に出てくる『中村林業』という架空の会社はそれなりに大きくて、伐採から市場に出すところまでを主人公が一貫して体験できていたので、うらやましいと思いました」。田實さんの「泣きどころ」は、木が高く売れることを知って、山の木を「ぜんぶ切っちゃえばいい」と放言する勇気に対して、親方であるヨキ(伊藤英明)がたしなめる場面だった。 「自分たちが切り尽くしてしまえば次の世代が困る、今ある木も何世代も前の人たちが残してくれたものを切らせてもらってるんだ、とヨキが諭すんですね。林業は農業と違ってすぐ結果が出ない。でもその意味が最初は分からず、自分もただ目の前の木を切って出すだけでしたから、この場面はもう本当にぐっと来ました」