泉房穂が市長を辞職することになった発言の真意と「明石市にお金がない」は嘘だと言い切れる理由
わが恩師 石井紘基が見破った官僚国家 日本の闇 #5
2019年明石市長を務めていた泉房穂さん。過激な物言いが問題となり批判にさらされたが、暴言の真意がわかると市民の反応は変化。一度は辞職したものの、その後再選を果たした。なぜ暴言を吐くに至ったか、そこには公共事業に対する怒りがあった。 【画像】泉房穂氏が「恩師」と語る政治家 書籍『わが恩師 石井紘基が見破った官僚国家 日本の闇』より一部抜粋・再構成し紹介する。
「火つけてこい!」の背景
公共事業に関しては、金額だけでなく、スケジュールも「長ければ長いほどいい」というのが、官僚の価値観のようです。たとえば幹線道路の拡幅工事なども、5年計画というと大体10年はかかります。 「火つけてこい!」の暴言で、2019年に私が市長を辞職することになった一件もそうでした。 あのときは、国道拡幅工事に伴うビルの立ち退き交渉が進んでいなかったことに対して、私が担当職員に暴言を吐いたことが問題となりました。 しかし、あの騒動の本当の事情としては、職員が「5年計画の工事を10年もかけて進めようとしていた」ことに対する怒りがあったのです。 問題となっていた明石駅前の道路では、道幅の狭さが原因で、人が亡くなる交通事故が起きていました。市民の命を守るために一刻も早く、工事を行なう必要がありました。 にもかかわらず、当初の計画から7年たっても、当該のビルの立ち退き交渉は一向に進んでいなかったのです。そこで思わず出てしまった暴言でした。 「道路工事は、当初の予算の2倍のお金をかけて、2倍の工事期間でやるもの」。日本の公共事業には、そのような暗黙の了解が存在しているのでしょうか。 5年計画なら10年、5億の予算なら10億です。「お金を使うこと」が工事の目的で、「今はなくてもよい道路も造ること」が慣習になっているからでしょうか。 あのとき、私は職員に「7年間、なにをしていたのか!」と言いましたが、工事はたまたま遅れたのではなく、最初から10年かけるつもりでいたようです。 そして国は、予算やスケジュールなどで、自治体が言うことを聞かなかったら、途中で予算を止めることもできます。そうすると工事全体が中断してしまいます。 国の言うことを聞かないと、お金を止められる構造になっているので、地方自治体は国に頭が上がりません。これが官僚国家・日本の地方行政の実情なのです。