か細い声で3回繰り返した「アイ・ラヴ・ユー」 最愛の夫ピート・ハミルは集中治療室のベッドで
「アイ・ラヴ・ユー」
娘のエイジュリンは翌朝いちばんのバスに乗ってこっちへ来るというので、翌日には「1日4時間」と決められた制限のなか、ふたりで2時間ずつ付き添えるようにできないか。わたしは担当者と長い交渉をして、ようやく了解をもらった。 すでに4時間が経ってしまったので、「明日、エイジュリンが来るわよ」といって、ピートの手を取った。 「アイ・ラヴ・ユー」「アイ・ラヴ・ユー」「アイ・ラヴ・ユー」 ピートはか細い声で3回繰り返した。 5日朝早く、ベッドの横に置いた携帯電話が鳴った。出てみると、メソディスト病院の看護師ですという声がして、 「ハミル夫人ですか?」 と聞いてきた。 「はい、そうですが……」 若い声の主はこう続けた。 「あなたのハズバンドの心臓は止まりました」 思わず時計を見ると、午前5時数分前だった。 (最終回) ※『アローン・アゲイン 最愛の夫ピート・ハミルをなくして』より一部抜粋・再編集。
デイリー新潮編集部
新潮社