世界初?国内伝統食由来の乳酸菌で「和テイスト」チーズ
木曽伝統の発酵食「すんき」由来の乳酸菌を・・・
乳製品製造販売のエイチ・アイ・エフ(長野県木曽郡木曽町)が、木曽地域伝統の漬物「すんき」を作る際に使う乳酸菌を活用した「麹(こうじ)すんきチーズ」の開発を進めている。すんきの乳酸菌を使ったチーズ作りは「世界初」としており、地域の新たな特産品にしようと12月ごろの発売を目指している。 【写真】店頭に並ぶすんき
同社によると、一般的なカマンベールチーズは生乳に「スターター」と呼ばれる乳酸菌を入れて発酵。生乳を固める「レンネット」(凝乳酵素)を加えて白カビ菌も混ぜ、形を整えるなどして熟成する。
すんき乳酸菌×麹菌チーズ
一方、麹すんきチーズは、すんきから抽出した「すんき乳酸菌」を使う。レンネットで生乳を固めるのは同じだが、白カビ菌ではなく麹菌を付ける。
地元産生乳のアイスクリーム製造から始めた同社は、20年ほど前からチーズやヨーグルトも展開。県工業技術総合センター(長野市)と連携し、すんきから抽出した約1600種類の乳酸菌から生乳と相性の良い菌を見つけ、それを活用したヨーグルトも長く手がけてきた。
国内生産のチーズは、輸入品のスターターに頼っているものが大半という。「できるだけ国産、地元産のものづくり」(斉藤信博社長)を志向する中、ヨーグルトで活用するすんき乳酸菌をチーズにも生かす方法を着想。日本獣医生命科学大(東京)から麹菌を使ったチーズ作りを教わり、試作を進めてきた。
「今までにない『和テイスト』」
チーズ職人でもある斉藤社長は、試作で「今まで食べたことのないような『和テイスト』の味わい」に仕上がったと強調。「日本酒にすごく合わせやすい」とする。8月にクラウドファンディングで資金調達し、量産に必要な設備などを導入した。
「すんき漬けを有名に」
同社がチーズ製造に乗り出した当時に比べ、全国各地でチーズ工房は大幅に増加した。2015年に国産チーズの品評会で最高賞に輝いた実績もある同社は、麹すんきチーズで他社との違いを打ち出す方針だ。14年9月27日の御嶽山(長野、岐阜県境)噴火災害以降、観光客の減少で売り上げは長らく低迷した。斉藤社長は「すんき漬けを有名にできたらいい」とし、観光需要回復のきっかけにもなるように―との思いを込めている。
〈エイチ・アイ・エフ〉
1999年、旧開田村(現木曽町)の有志が設立。生乳やトウモロコシ、ブルーベリーといった地元産の原料を生かし、アイスクリームやヨーグルト、チーズを作る。2015年には国産チーズの品評会「ALL JAPAN ナチュラルチーズコンテスト」で、カマンベールチーズが最高賞の農林水産大臣賞を獲得した。23年12月期の売上高は7600万円。従業員5人