「私が“ポイ活”と縁を切った理由 『無駄遣い』が一切無くなり結果的に大幅な節約に」稲垣えみ子
元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。 【写真】焼き肉ランチに行ったらご飯が超大盛! * * * 前号のアエラがポイ活特集だったので私も一言書きたくなった。それはポイ活と「おトク」の関係について。 私、50歳で会社を辞めた時にポイ活と縁を切った。普通に考えたら妙な行動である。だって当時は収入のアテがほぼゼロで少しでもおトクに生活せねばならぬ局面であり、当然、最初は張り切ってポイ活研究に励んだのだ。だがどのグループに入るのが一番おトクか悩むうちにフト、あることに気づいた。 ポイントを貯めるとは、誰かに囲い込まれることだ。その「誰か」とは、大企業である。私はポイントを貯めようと決意した途端、大企業の思惑に従って生きることになるのだ。例えば豆腐や野菜を買うときも、近所の零細個人店ではなく、ポイントの貯まる大手スーパーで買うことになる。そのことがどうもヘンな気がした。だって、私はつい先日大企業を辞めたのだ。大きなものに守られて生きることをやめ、自分なりに新しい生き方を模索せんとしているのだ。それが実際どういう生き方かはまだ全然わからなかったが、少なくとも再び大企業に取り込まれて生きることじゃないはずだった。 ってことで意を決し、一切のポイントから足を洗うことにしたのである。そしたらね、これがもう全くサイコーだったんですよ。 一言で言って、めちゃくちゃ自由だった。いつでもどこでも何を買うのも自由。何がお得かをチェックする必要も、ポイントがつくからと余計なものを買うかどうかで悩む必要もない。ただそれだけのことが驚くほど爆発的に清々しかった。逆に言えば、それほどポイントに縛られて生きていたのである。相当な時間とエネルギーを使ってポイントに支配され振り回されてきたのである。 こうして私は時間とエネルギーを手に入れストレスも消え、しかも本当に欲しいものをよく考えて買う習慣が身についたので「無駄遣い」が一切なくなり、結果的に大幅な節約となった。要するに、これ以上おトクなことなんてなかったのだ。 いながき・えみこ◆1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。著書に『アフロ記者』『一人飲みで生きていく』『老後とピアノ』『家事か地獄か』など。最新刊は『シン・ファイヤー』。 ※AERA 2024年12月16日号
稲垣えみ子