陰謀論にデマ、誤報。SNS時代におけるイギリス王室のメディア戦略の危機
英王室はSNSの活用には前向きだが……
近年、イギリス王室はSNSを有効活用しており、公式アカウントを作成し、慈善活動に関する情報を共有したり、ロイヤルベビーの誕生を発表している。しかしそれは、報道機関との暗黙の合意の上で長年行われてきたような物語のコントロールを維持するものではなく、彼らのSNSとの関係は進化し続けるニュース業界において、オンラインでの誤った情報にさらに燃料を投下するだけになってしまっている。
ニュースはSNSでキャッチする時代
英国放送通信庁(Ofcom)が昨年発表した調査によると、今日では、英国の成人の3分の2が、ニュースのソースとしてソーシャルメディアを挙げている。18~24歳ではこの数字はさらに高く、83%がSNSで配信されるニュースから情報を得ているという。
出版物はもはや大衆の意見に拘束力を持たない
王室がロイヤル・ロタ(王室記者制度)に従って行動していた時代とは対照的に、出版物はもはや大衆の意見に拘束力を持たなくなっている。代わりに、SNSを牛耳るシリコンバレーの住人たちが、ますます二極化して区別された社会の意見をコントロールし、王室の報道チームではなくデジタルアルゴリズムによって既定された“ニュース”が絶え間なく代謝されている。
「決して不満を言わず、言い訳もしない」は今の時代にそぐわない
社会政治の力学が変化し、私的なものと公的なものの境界が曖昧になる中でも、イギリス王室はこれまで長い間、「決して不満を言わず、言い訳もしない」という、エリザベス女王の公の場でのあり方を表す、有名なベンジャミン・ディズレーリの格言に従うよう努めてきた。しかし、 母の日の写真の加工に関するキャサリン妃の最近の謝罪から分かるように、彼らはオピニオンベースの事実とソーシャルメディアが騒がしい時代に沈黙を保ち続けることが、イギリス王室の声だけでなく、力も弱めるという事実に気づきつつあるようだ。
切っても切れない関係にあったメディアと英国王室
ヘンリー王子は昨年ITVのインタビューでトム・ブラッドビー記者に「私の家族は10年以上にわたって報道陣にしっかりと情報を与えてきた」と語り、一部のメンバーが「自分たちのイメージ回復のために悪魔(タブロイド紙)と手を組んだ」と主張した。 回想録『スペア』の中で、彼は次のように書いている。「個人的にもシステム的にも、馬車よりも時代遅れのロイヤル・ロタに乗っていた。それは約40年前に考案され、イギリスの出版物や放送記者に王室への第一次対応を与えるものだったが、非常に悪臭を放っていた。公正な競争を妨げ、縁故主義を生み出し、一部の記者集団に権利があると思いこませた」