陰謀論にデマ、誤報。SNS時代におけるイギリス王室のメディア戦略の危機
自分たちの物語がコントロールできなくなった英王室
「これまでは王室は報道機関との関係を通じて自分たちの物語をコントロールできていました」とメディア・文化研究の上級講師で論文「Misinformation in Everyday Life: Portable Principles for Social Media Research」(日常生活における誤情報:ソーシャルメディア研究への移植可能な原則)の著者であるロブ・トピンカ博士は語る。 トピンカ博士は、最近のキャサリン妃の写真加工スキャンダルに触れ、次のように分析する。「私たちが目撃しているのは、英王室に対する人々の認識の変化です。王室は物語が自分たちの手から奪われために、それを取り戻すのに苦労しています。物語は彼らよりも大きくなってしまったのです」
キャサリン妃の不在が陰謀論に拍車をかける
陰謀は酸素を与えられるとより強力になる。つまり、陰謀が世の中に広まれば広まるほど、それはより信じられるようになってしまうのだ。陰謀が独り歩きするのは、人々が認識している現実と真実の間の暗い空間だ。 キャサリン妃の「失踪」の背後にある「真実」を分析する動画が世界中のユーザーによって作成され、「#KateMiddleton」という言葉はTikTokだけで130億回以上再生されている。キャサリン妃の不在こそが、これらの陰謀論に命を与えているのだ。
「信じてもらうためには見られなければならない」
結局のところ、王室の重要性は、注目される能力にある。エリザベス女王の有名な言葉「信じてもらうためには見られなければならない」にあるように、それは、彼らが人々の心に寄り添っていると見てもらえる、非常に現実的で具体的な方法のひとつである。キャサリン妃の姿を公衆から奪っているがために、公衆は取り残され、ネット上のエコーチェンバーから最新の情報を得て、その空白を埋め、自己学習を繰り返しているのだ。
がんを公表したチャールズ国王
今日では、王室は姿を見せるだけではもはや十分ではなく、発言し、理解されることが期待されている。チャールズ国王はここ数カ月、自身の健康問題に関してこのようなオープンさを活用しようとしてきた。宮殿がチャールズ国王のがんの診断について声明を発表してから24時間で、イギリスにおける前立腺がんの研究基金「Porstate Cancer UK」のウェブサイトでの、症状に関する検索数は97%以上増加した。