別れた夫の悪口を子どもに言わなかった母の思い 2人の「ひとり親の子育て」を通じて感じたこと
最初は眉をひそめていた人たちも、次第に「あのお父さんも、困ってんねんな。もう納得したから、大丈夫」と、その親子を見守るようになっていきました。 そんな問題児ならぬ“問題な父"だった人が、無事に一人息子を高校まで卒業させることができたのです。息子は就職まで決めて、「校長先生、お金稼げるようになったから」と、初めてのお給料で抱えきれないほどたくさんのジュースを買ってきてくれました。 父親の頭をなでながら、
「父ちゃん、悪いことしてへんか!?」 と冗談まじりに尋ねたら、 「してません! 校長先生、もういい加減、言わんといて。わしほんとに真面目に生きてるから!」 と、真っ赤な顔して、破顔一笑。 その隣で息子は、私の顔をまっすぐ見つめて、「大丈夫、大丈夫」って頷いていました。 お父さんは何度もやり直しをして、変わったんですね。 大人だって、可能性は無限大。人はいくらでも変われる生き物なんです。このお父さんがそのことを、教えてくれました。
■お父さんの悪口は言わないで 大空小学校は、子どもが自由になんでも言える場所でした。だから、子どもたちも家のことをたくさん、教員たちに話してくれました。 「お父さん、お母さん、いつもケンカしてる。いつ別れるかわからへんわ」 「毎日ケンカしてるから、俺、黙ってる。家ではなんもしゃべれん。こんなんなら、別れたほうがいいかもしれない。でも、パパかママかどちらかについて行くなんて、究極の選択やろ? そんなん、できんな」
なんて、軽い感じで話す子もいました。 夫婦を何年もやっていたら、ぶつかることもすれ違いも、あるでしょう。腹が立ってケンカをしてもいいけれど、弱者(子ども)を守る視点を、忘れてはいけませんよね。言ってはいけないことがあります。 言ってはいけないこととは、何か? その場にいる1人ひとりが、想像しないといけません。それぞれに違うと思いますが、少なくとも、大人への信頼をなくすようなことは言ってはいけないと思います。子どもに「こんな親で不幸だ」「大人になんてなりたくない」なんて思わせてはいけないですから。