「時速200キロ時代」の終焉 欧州のミニバンはどう進む?
速度無制限のアウトバーンを時速200キロで走る時代は終わった。それらがセダンに与えた影響は前回書いた。ベルリンの壁が崩壊して以来、東西ヨーロッパは相互の資本と市場がかみ合って急速な経済発展をもたらし、それが慢性的な道路渋滞を産んだからである。 【写真】欧州「時速200キロ」世界の消滅がもたらしたこと セダンの求心力が下がるのと入れ替わりに、広くて居住性が優れたクルマの時代がやってくる。乗用車に背の高いボディを与えたピープルムーバーと呼ばれるクルマ。日本車で言えばホンダのオデッセイのようなクルマたちだ。
口火を切ったルノー・セニック
口火を切ったのは1996年のルノー・セニックだ。日本で言えばオデッセイがアコードのシャシーを流用して作られたように、セニックはメガーヌのシャシーに大きなエアボリュームを持つボディを与えることで成立している。 これが大ヒットモデルとなって他メーカーは続々とセニックのフォロワーを産み出して行く。シトロエンはピカソ、フィアットのムルティプラ、オペルからはザフィーラ、フォードC-MAX、フォルクスワーゲン・トゥーランなどが次々と登場してくるのだ。これらのクルマはセニック同様、乗用車のシャシーを流用して作られている。 プジョーは307SWでこうしたピープルムーバー・マーケットに参入した後、さらに空間拡大を押し進め、下は1007から2008、3008、5008まで4ケタの数字を持つモデル群を開発し、従来の3ケタ番号を持つモデル・ラインナップにかさ上げしたルーフを与えた。こうして定員数こそまちまちだが「各サイズでより広い空間を」という希望をかなえるモデルを一気に拡充したのだ。
「真っ直ぐ走らない」という事実
しかし、背の高いクルマは走りをまとめるのが難しい。重量が重くなり、重心高が上がるからサスペンションを固めたい。しかし渋滞が増えて速度レンジが下がった以上、低速での乗り心地の向上は必須。結果として柔らかいサスペンションで、重く重心の高いボディをなんとか支えなくてはならないので大変なのだ。 何もスポーツカーの様にキビキビ走ると言う話をしているわけではない。例えば日本のミニバンには高速道路を時速100キロで自然に真っ直ぐ走れないクルマがかなりある。信じられない人もいるだろうが、そのくらい難しいことなのだ。