韓国防衛産業、中ロを抑えて陸・海・空「南米突撃」(1)
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領のペルー訪問を契機に韓国防衛産業の中南米進出に青信号がついた。現代ロテム・HD現代・韓国航空宇宙産業(KAI)がそれぞれペルーの陸・海・空軍防衛市場に進出する見通しだ。 尹大統領は16日(現地時間)、ペルーのボルアルテ大統領と首脳会談を行い、両国の国防・防衛産業分野の協力を拡大することにした。ソク・ジョンゴン防衛事業庁長も同日、ペルーのアストゥディロ国防相と会い、地上・海上・航空分野の防衛産業協力案について議論した。 現代ロテムは16日(現地時間) 「地上装備協力総括協約書」に署名したと明らかにした。地上武器供給事業の総物量と事業規模を決定する協約で、今後進行される実行契約に納期、仕様、教育訓練内容、維持条件など細部事項が入る。 現代ロテムは5月にペルー造兵廠が発注した車輪型装甲車「K808白虎」30両供給事業を受注し、中南米市場に進出している。今回の協約でK2戦車・系列戦車と車輪型装甲車の後続物量など地上武器体系全般を供給することになった。 HD現代はペルー国営SIMA造船所と「潜水艦共同開発を通したペルー産業発展了解覚書(MOU)」を締結した。ペルー海軍は老朽艦艇入れ替え事業を推進中だが、双方はペルー海軍向けの潜水艦を開発して現地化と産業協力も拡大する予定だ。 これに先立ちHD現代重工業は4月、SIMA造船所と3400トン級護衛艦1隻、2200トン級遠海警備艦1隻、1500トン級揚陸艦2隻の艦艇4隻に関する現地建造・共同生産契約を締結した。契約金額は6406億ウォン(約710億円)と、中南米防衛産業輸出史上最高額だ。これを受け、HD現代重工業は9月にペルーに支社を設立し、10月に初めての資機材を出港した。 KAIはペルー国営航空企業SEMANと戦闘機「KF-21」の部品現地共同生産のための協約を締結した。ペルー空軍は旧ソ連が開発した戦闘機「Su-25」「MiG-29」などを保有しているが、老朽機体入れ替えのため次世代戦闘機導入事業を推進している。韓国の「KF-21」と軽戦闘・攻撃機「FA-50」などが候補群に入っている。KAIはペルー側にFA-50とKF-21をパッケージ提案し、予算内での最適な性能と効率を提供する戦略だ。ペルーは2012年、韓国初の独自技術航空機「KT-1P」20機を導入している。 ◆中ロと密着の中南米…なぜ韓国防衛産業に関心? 中南米防衛産業市場は今後の成長の可能性が高いと評価される。対外経済政策研究院(KIEP)の報告書によると、中南米では暴力団体の犯罪、政府軍と武装団体間の衝突、麻薬犯罪、難民による国境葛藤が続いていて武器の需要が多い。市場調査会社モルドールインテリジェンスは中南米防衛産業市場が今年の253億6000万ドル(約3兆9200億円)から2029年には314億1000万ドルまで成長すると見込んでいる。 ただ、市場をどう確保するかについては悩みが必要だ。1990年代末から2010年代初期まで中南米主要国で左派政権が執権(ピンクタイド)し、ロシア・中国と政治・経済的に密着する様相を見せたからだ。KIEPの報告書によると、2007-16年の中南米防衛産業市場でロシア産のシェアは27.7%、中国産は4.6%だった。ペルー・ベネズエラ・ニカラグアなどがロシア武器の主な顧客であり、アルゼンチン・ボリビア・エクアドルなどは中国産武器を輸入した。 しかし2010年代半ばに状況は変わった。2017年以降、中南米国家の経済危機と政治的混乱が広がり、新規武器導入の余力が減った。さらに2022年以降はロシアのウクライナ侵攻と米中技術覇権競争による西側の制裁強化でロシア・中国との関係も以前より疎遠になった。韓国防衛産業が入り込む隙が生じたということだ。