「へぇ~」が止まらない足立区と葛飾区「区境」。辿って見つけた”境界の証拠”に興奮~「境界協会」主宰・小林さんの“推し境界”を紹介~
かつて川は亀有中通り商店街の入り口付近を通っていて、両区の境界線はやはり古隅田川に沿っている。ここにも境界を示すわかりやすい「証拠」があり、両区の境目付近で道路の舗装や住居表示が異なっていた。 僕らが境界を熱心に見ているのが気になったのか、長年この地に住む高齢男性が声をかけてきた。 「昔はここに川があって、洪水が多かったんだよ。だから、この辺の家は少し土台を高くして造っているの」 つまり、洪水や増水が多い土地だったため、戦後に治水対策として川の流れを変えたのである。「境界のことを調べているとその土地の歴史や成り立ちもわかるんです。それが面白い」と小林さんは満足げだ。
さらに自転車で亀有駅前まで来ると、大型商業施設「アリオ亀有」が見えた。実は両区の境界線が、アリオの1階の中を通っている。 さらに境界に沿って進むと、近くには大規模マンションがあり、同じ敷地内のマンションの棟と棟の間にちょうど区の境界線がある。同じ敷地内のマンションなのに子どもが通う学校は違う、という複雑な事態も想定されるのだ。 ■境界によくある”キスマーク” このマンションの前には足立区と葛飾区の「境界標」があった。両区の境界標は仲睦まじく肩を寄せ合う恋人のように並んでつくられていて、小林さんはこの状態を「キスマーク」と呼ぶ。「このキスマークを見つけると嬉しく達成感があります」
さらに、古隅田川は江戸時代初期ごろまでは武蔵国と下総国の境界だったという。下総国の一の宮(ある地域の中でもっとも社格が高いとされる神社)は千葉県香取市にある「香取神宮」だ。亀有に「亀有香取神社」があるのは、かつて亀有付近が下総国だったことを示している。 これもまさに境界が生んだ歴史のロマンとでもいうべきエピソードだ。 こうして葛飾区と足立区の境界をたどり続けて約2時間。ついに「ゴール」である亀有駅近くにある中川の土手までたどり着いた。