「へぇ~」が止まらない足立区と葛飾区「区境」。辿って見つけた”境界の証拠”に興奮~「境界協会」主宰・小林さんの“推し境界”を紹介~
なぜこんな複雑な境界線になっているのだろうか。その答えは近くを流れる「古隅田川」だ。古隅田川はかつて今の荒川付近まで川が流れており、古隅田川に沿う形で足立区と葛飾区の境界ができていた。 しかし、治水工事によって古隅田川はせき止められ、両区の境界線だけがそのまま残ったというわけだ。「古隅田川の延長線上が、先ほどの荒川河川敷の境界線にあたるのです」。 荒川河川敷からいったん小菅駅に戻り、その後は徒歩でなく自転車で両区の境界をたどった。東京拘置所を囲むようにして流れる古隅田川から綾瀬川沿いを経由し、JR綾瀬駅方面に向かうと、駅の手前に蛇行した道と道沿いに連なる駐輪場が見えてきた。
よく見ると、道に「北野橋」という表示板が埋め込まれているが、橋らしきものは見当たらない。「あっ、まさか」。僕自身が言葉を発しようとしたそのとき、小林さんが言った。「もうお気づきかもしれませんが、かつて駐輪場のところに川が流れていて、ここに橋があったんです」。 ■同じ場所に「葛飾区」「足立区」の表示が混在 この駐輪場は綾瀬駅まで続き、「葛飾区」が立てた看板と「足立区」がつくった上水道のマンホールが隣り合い、両区のガードパイプが並ぶ場所もあった。つまり、この両区の表示が並ぶ地点がまさに境界線を示していることになる。
ちなみに、両区のガードパイプはよく見るとデザインが違う。葛飾区のほうは荒川、中川、江戸川という区内を流れる大きな3本の川をイメージしたデザイン、足立区は区の花であるサクラをイメージしたデザインだ。これぞまさに「境界」の醍醐味。「こういうのを見つけると興奮する」という小林さんの気持ちがよくわかった。 ■区が変われば舗装も変わる 綾瀬駅付近を抜け、今度はマンガ『こちら葛飾区亀有公園前派出所(こち亀)』で知られる葛飾区亀有方面に向かった。古隅田川はこの亀有付近にも流れていたといい、今も暗渠に近いような、川だった名残がある地点が随所に見られる。