【韓流】ホン・サンス監督やポン・ジュノ監督作品の演技を見ながら、名優イ・ソンギュンに思いを馳せる「韓国映画6選」
■学生たちに不倫を追求される大学講師役 『ヘウォンの恋愛日記』(2013年) イ・ソンギュンは大学で映画を教える妻子持ちの講師役。学生たちとの飲み会で、同席している不倫相手の学生ヘウォン(チョ・ウンチェ)と付き合っているんじゃ? と突き上げを食らう。 話題を逸らそうと乾杯しようとする姿や、ステンレスのコップにソジュを注ぎ、焦りや気まずさを飲み込もうとする姿は、あわれだがユーモラスな名演技だった。 ラストで、デート場所の南漢山城でヘウォンに去られ、ベートーベン交響曲7番2楽章を聴きながら、一人むせび泣く後ろ姿はなんとももの悲しく、その後の彼の運命を思うと涙を禁じ得ない。 ■酒に飲まれる映画監督 『ソニはご機嫌ななめ』(2013年) 餓鬼のようにむさぼり食うシーンで光る名役者がハ・ジョンウなら、だらしなく酒に酔うシーンで光る名役者はイ・ソンギュンだろう。本作で彼は、わがままな学生ソニ(チョン・ユミ)に振り回される映画監督ムンスを演じた。 見ものは、安国駅の近くに実在したバー「アリラン」で先輩(チョン・ジェヨン)相手に愚にもつかぬことを言いながらソジュを飲み続けるシーン。 ホン・サンス監督は飲酒シーンで俳優に本当に酒を飲ませることで知られているが、このときもそうだったのだろうか。目の座り方と言い、くどくど自説を語る姿と言い、酒好きなら誰もが身につまされるリアルな演技だった。 ■CEOの明暗を演じ切った『パラサイト 半地下の家族』(2019年) ホン・サンス作品で人間味たっぷりのダメ男を演じてきたイ・ソンギュンだが、本作ではそれとは対照的なIT企業の冷徹なCEO役を演じた。 終盤のガーデンパーティの余興シーンで、最初は穏やかな声で運転手(ソン・ガンホ)に息子のための余興の演技指導をしていたCEOだが、運転手が気乗りしていないとわかると表情を一変させ、「これも仕事の延長だと思ってもらわないと」と高圧的に告げた。このシーンは、ゾッとするくらい怖かった。 本作で演技の幅を見せつけたイ・ソンギュン。この3年後には、『キングメーカー 大統領を作った男』で選挙戦略家に扮し、事実上のキム・デジュンを演じた名優ソル・ギョングを食う存在感を示した。 今も、新しい映画を観ると、この役はイ・ソンギュンがハマったのでは? と思うことがある。あらためてイ・ソンギュンの冥福を祈りたい。 1年経っても悲しみはなかなか癒えないが、イ・ソンギュンの妻で女優のチョン・ヘジンが、チョン・ドヨン&チ・チャンウク主演映画『リボルバー』(日本劇場公開2025年2月)やファン・ジョンミン&ヨム・ジョンア主演映画『クロス・ミッション』(Netflix独占配信中)で元気な姿を見せてくれているのは救いだ。特に『クロス・ミッション』では意外な役柄を演じているので必見である。
チョン・ウンスク
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