【大学トレンド】障害ある学生を支える「ピア・サポーター」が増加傾向、活動内容は?
学生同士で授業を支援
香川大学では、2015年に「バリアフリー支援室」を開設し、翌年から本格的に活動を始めました。 とはいえ、支援室の開設当初は支援を必要とする学生がいたわけではありません。しかしながら、いずれそのような支援を必要とする学生が在籍することを見越して、まずは学生サポーターである「ピア・サポーター」の養成に力を入れました。「ピア」とは、英語で「仲間」「同輩」の意味です。障害のある学生の支援は多岐にわたるため、学生サポーターの存在は欠かせません。実際のサポート場面では、ピア・サポーターの自主性や、サポーターと支援を受ける学生とのコミュニケーションが重要です。 同大バリアフリー支援室専任教員の大沼泰枝さんは、「いざサポートが必要な障害のある学生を迎えることになったときに備えて、常にピア・サポーターを募集し、2017年以降は30~50人ほどに登録してもらっています。ピア・サポーターになるために特別な資格などは必要なく、希望者は登録後、講習を受けてもらいます。サポートを希望する学生がいない年であっても、手話や車椅子介助、要約筆記などの講習会を定期的に開催しています」と話します。
助けた学生の成長にもなる
2024年3月に教育学部を卒業した多田雅さんは、2年次に「聴覚の発達と障害」という授業を受講したことをきっかけに、ピア・サポーターに登録しました。 「ピア・サポーターの存在自体は知っていましたが、自分に務まるのかなという不安があり、登録するのを躊躇していました。でも、授業で次年度から聴覚に障害がある学生が編入学すると聞き、自分の空きコマを使ってだれかの役に立てるのならと思い、サポーターに参加することにしました」 多田さんが3年になった2022年度に、國富浩人さんが教育学部へ編入学してきました。國富さんは聴覚障害で授業が聞き取りづらいため、音声認識アプリ「UDトーク」を使った授業支援を希望しました。これは授業の内容を知るための「情報保障」に該当します。 多田さんらアプリの講習を受けたピア・サポーターたちは、國富さんが履修する10科目ほどの授業を手分けし、それぞれの授業の空き時間を使って受け持ちました。一緒に授業に出て、アプリを介して文字起こしされる内容の誤変換や不要な雑談部分などをパソコン上で修正・編集する作業を行いました。 多田さんは、「最初のうちはアプリやパソコンの設定に苦労し、急に音声の文字起こしができなくなったり、Wi-Fiがつながりにくい環境でパソコンがうまく作動しなかったりしてパニックになっていました。でも活動を続けていくうちに、トラブルが発生したときはノートと鉛筆に切り替えるなど、臨機応変に対応できるようになりました。自分自身の成長も感じることができ、自信がつきました」と振り返ります。 支援を受ける側の國富さんも、以前在籍していた大学とは支援体制が異なったことで、「周囲の認識や環境を変えるためにも、自分が何に困っていて、何を助けてほしいのかを周りに明確に伝える力が身につきました」と話します。