「女系」容認は多数派だが立憲民主党の微妙な事情 成城大教授・森暢平
◇保守/リベラル 静かな対立 「女系」反対の全39人には、立憲民主党政調会長の重徳和彦が会長を務める政策集団「直諫(ちょっかん)の会」(重徳グループ)のメンバー10人がいる(高松、緑川、藤岡、森田、篠原、山崎、落合、源馬、重徳、井坂)。重徳グループには旧宮家養子案を支持する発信をする者も多く、党内で男系を推す一団をなす。 また、「女系」反対の39人には、2020年9月に、旧立憲民主党が、旧国民民主党ほかと合流した際、旧立憲民主党以外から加入した議員が目立つ。原口、高松、階、緑川、玄葉、青山、森田、田嶋、谷田川、江田、笠、太、後藤、近藤、今井、渡辺、源馬、牧、岡本、重徳、大西、井坂、津村、佐藤、稲富、城井である。 枝野幸男が代表を務めていた旧立憲民主党は19年6月の段階で、安定的な皇位継承に向けた論点整理を発表、女性天皇だけでなく、「女系」を認めた。旧立憲民主党は、旧宮家男性の皇籍復帰を認めることは困難だと明確に述べていた。 他方、玉木雄一郎が代表を務めていた旧国民民主党も同月、「皇位検討委員会」(座長・津村啓介副代表)が皇室典範改正案をまとめた。ポイントは、皇位継承資格を「男系の男子」から「男系の子孫」と変更し、女性天皇は認める内容としたことだ。ただ、記者会見した玉木は、「男系の系統を守っていくことが安定的な皇位の継続性を考える上で重要だ」と説明し、旧宮家復帰案を重視する考えも示していた。 すなわち、新しい立憲民主党が発足する1年前、旧宮家復帰をめぐって、旧立憲民主党と旧国民民主党はまったく異なる立場を取っていたのである。今も、保守とリベラルが党内で併存し、潜在的な対立の芽をはらんでいるのは、過去の経緯が影響する。 ◇「多数」なのに声小さい女系派 とはいえ、女性天皇にも「女系」にも賛成する議員は立憲民主党内では多数派である。とくに女性議員の多くが「女系」に賛成しているのは心強い。心配なのは、「女系」派の声が大きくないことだ。