人間関係の悩みを解決に導く、年400回以上開かれる僧侶の「心の授業」とは?
人を不幸にするものは何なのか? 「長年考え続けてようやくわかりました。人間の心に波をたてるもの凄い種が見つかったんです。それは“人間関係”でした」 奈良の古刹・薬師寺で副執事長を勤める大谷徹奘(おおたにてつじょう)さんは、1999年11年春から、悩みとの向き合い方を説いて回る講演「心の授業」の全国行脚を行っている。スローガンは、「心を耕そう」。多い年には年間400回以上もの講演をこなしている。その輪は口コミで広がり、保育園や学校教員、修学旅行生、企業研修などでの講演を依頼される。ここ数年は宮城や福島など、東日本大震災の被災地にも幾度となく足を運ぶ。 「人間はひとりにひとつずつ心を持っています。その心の使い方によって、私たちは目の前の世界を幸せにも不幸にも変えることができるんです」(大谷徹奘著『よっぽどの縁ですね』より)。「心の使い方」を知れば、心がスッと軽くなり、なぜだか元気な気持ちにさせられる。大谷さんはその方法を伝授しているのだ。
その講演の一部を紹介しよう。 「人間って汚い生き物で、目の前につらい、苦しい、悲しい、思い通りにならないという絵が並ぶと、文句しか言わない。私もそうでした。師匠に会わなければよかった、坊さんにならなければよかった。朝のお勤めのときに仏さんに向かって、仏さん、あんたさえいなかったら、って心の中で言いましたよ。だけど仏さんってすごいんだよ。どんなに汚い言葉を投げつけても、絶対反論しないからね、立ち上がりもしないからね」と大谷さんが話すと、会場はどっと笑に包まれる。さらに、 「仏は答えない。だけど本当に自分をさらけ出せば、ちゃんと自分の内側にあるものを気づかせてくれる。その時、仏さんはたった一言、私にこう言いました。〈自分で選んだんじゃないの?〉って。覚えておいて下さい。今の家庭だって、職場だって、皆さん方は自分で選んだんだよ」 そして、常に迷いつづける私たちにも、いつかは仏教でいう究極の幸せ「悟り」がおとずれるという。「悟」という字を大谷さんは、次のように解説する。 「この言葉はもともと、3文字の言葉だったのに、私たちの先輩方が分解して使ってしまったから、わからなくなっちゃったの。悟という字の上にはもともと2文字がついています。〇〇悟。上2文字は、自、覚です。“自覚悟”というのが悟りの原語なんです。上の2文字をとると自覚、下の2文字をとると覚悟。これをあわせて悟りと略してしまったんですね」 自分で自分の心が分かる、自分で自分の心に目覚める。幸せの条件はいくらでもあるという。 「だけど、その中で重要なことのひとつは、自分の夢に自分の命を使うことなの。人にやらされていることはストレスをためているに過ぎないんですよ」