備蓄で足りず「庭の池の水も利用した」 能登半島地震での福祉避難所開設、法人理事長が経験語る/京都・福知山市の研修会で
災害時の「福祉避難所」について考える防災セミナーがこのほど、京都府福知山市内で開かれた。このうち、能登半島地震で、運営する高齢者施設を福祉避難所として開設した石川県志賀町、社会福祉法人麗心会の藤田隆司理事長(48)が講演。避難者を受け入れたことを振り返り、必要なことや課題点などを話した。福知山市社会福祉協議会主催。 福祉避難所は、広域避難所などでの生活が困難な高齢者や障害者らが避難生活を送る場所で、市は高齢者施設など17施設を指定している。 麗心会が運営する施設は高台にあり、地震があった1月1日は津波の恐れがあったことから、一般避難者や要配慮者ら94人が一時避難。藤田理事長は「施設へ助けを求め避難してくる人を福祉人として断ることができなかった」と受け入れ、職員が自発的におにぎりとお茶を振る舞った。 志賀町とは、災害時に福祉避難所として3施設を開設する協定を結んでいたが、うち2施設は天井の落下や屋根瓦がめくれるなどしたため、残る1施設を福祉避難所として開設したと説明。2日以降、最大25人を受け入れ、5月9日に閉鎖するまで、主にデイサービスの職員が対応した。 断水の影響で備蓄していた水の量では足りず、排水に使うため、庭の池の水も利用。地震発生日に受け入れた地域住民が、毎日川からくんだ水を届けてくれたり、給水支援があったりして水の備えの大切さを実感したという。 住居を失った職員が近くのアパートが満室で借りられず、遠方に住居を移すことになり、6人が退職したことを後悔しているといい、施設内に職員が住める環境を整えておく必要性を強調。職員に負担をかけたことを反省し、避難者の見守りなどを行う要支援者避難生活サポーターらを活用するなど「避難所への支援は遠慮なく受けてほしい」とアドバイスした。 セミナーは猪崎の三段池公園総合体育館第1会議室で開かれ、福祉関係者や一般市民ら約70人が参加。福知山公立大学地域経営学部の大門大朗准教授と福知山市地域包括ケア推進課の高橋和利さんの福祉避難所などに関する講演もあり、受講者が熱心に耳を傾けていた。