ツアーきっての鉛マニア 欧州も旅した”お道具箱”を初公開/星野陸也のギア語り<前編>
ダンロップのツアーレップに聞いた
クラブ使用契約を結ぶ住友ゴム工業(ダンロップ)の担当(ツアーレップ)、中村俊亮氏に助けてもらおう。2人は星野がレギュラーツアーに定着してから2年目の2018年頃からの付き合い。クラブの細かな調整はもとより、意見交換を長らく重ねてきた。 「星野プロのすごさはとにかく準備に力を注ぐことです。何カ月も前から『あの試合ではこういうクラブを使いたくなるはず』と、いつもずっと先のこと考えて、(メーカーに)早めにオーダーする」(中村氏) およそ6年前、星野が最初に細かいチューニングを依頼したのはウェッジだった。「自分の場合はバウンスの頂点(最も地面に近い部分)が1mmズレているだけでダフったり、トップしたりすることが増える。親身になってピッタリに削ってくれたのが中村さん」
実際にアドレスしたときの上からの見た目は一貫していて、フェースは縦幅が少し長目で、いま流行りの三角形っぽいものよりも、四角形に近い形状が好み。”出っ歯”ではなく、グースがわずかに入り、ボールをやさしく包み込むような印象を持たせるものを選ぶ。 しかし、「プロはそれぞれのコースに合うウェッジを使いたい。中でも星野選手はその気持ちが特別強い。地面の固さ、芝質に合うものを細かく選ぶのでバリエーションをたくさん持たなければならず、ストックづくりが大変です。リーディングエッジ側(飛球線側)やトレーリングエッジ側(後方)の角度を変えたり、頂点の位置を1mm前に、後ろにずらしたり…。わずかな変化なんですけど、作っては試してを繰り返します」と中村氏。 これまで作ってきた形状違いのウェッジは、40種類はくだらない。他のツアープレーヤーは「一年を通して同じ形状を使う選手が多く、たまにローバウンスのものを用意する選手がいるくらい」と言うから星野のサポートは…大変だ。
感覚が優れたゴルファーを相手にクラブセットを組むにあたり、製造側が頭を悩ませる問題のひとつに“個体差”がある。同じ製品の中にも形状や重さにほんのわずかな、大多数の人は気づかない違いが出てしまうのが現実だ。ゴルフクラブをつくるヘッド、シャフト、グリップそれぞれに細かい製品管理をしているにも関わらず、バラつきが出る。パターで1g以下の調整を施す星野だから、やはりその誤差にも厳しい。50.5gのグリップの誤差の許容範囲は±0.3gまで。130gのアイアン用スチールシャフトは±0.5gまで、と細かくオーダー。それらを組み合わせる接着剤の量にまで目を光らせる。 「接着不良を起こさない(使用中に抜けてしまわない)ように、1本あたり“最低”1gは入れるのですが、星野選手はその通り1gでないとダメ。でもそれだけ重量管理をするので、ちょっとした鉛を貼っても分かりやすいのだと思います」 これだけそろってようやく、指定のグリップテープ(バッファロー)を巻き始める(らせん一重巻き)ことができるという…。 <後編へ続く>