ツアーきっての鉛マニア 欧州も旅した”お道具箱”を初公開/星野陸也のギア語り<前編>
星野陸也はツアーきってのギアオタク…いや、ギアマニアとして知られている。あらゆるクラブに重量、重心調整用の鉛テープを貼り、それが移動中に剥がれないようアイアンセットにまでヘッドカバーを装着する。その繊細さと探究心はメーカー担当者も腰を抜かすほど。DPワールドツアー(欧州男子ツアー)からPGAツアー(米国男子ツアー)への扉を開いた28歳がクラブへのこだわりを明かした。(聞き手・構成/桂川洋一、谷口愛純) 【画像】松山英樹、大西魁斗、星野陸也がスーツ姿で登場
初公開 星野陸也のチューニングセット
世界を駆け回る星野はキャディバッグにいつも”お道具箱”を忍ばせている。長辺20㎝あまりの黒いポーチの中に、クラブをチューニングするためのキットがぎっしり。中身をひろげ、満面の笑みで手にしている(冒頭の写真)のは、鉛テープのロール(業者用)と、小さく切り刻んだそれがいくつか入ったビニール袋である。 鉛を0.1g単位で細かくするのが珍しくないから、カットするのは鼻毛バサミがちょうどいい。メーカーが製造するウッド用のウエートも各種合わせて30個近くある。ちなみに、スリクソンのボールのパッケージを切った4枚の紙は「メモ帳に使っている」という。
鉛をリユースする男
星野のアイアンはどの番手のバックフェースにも鉛がベッタリ。もう中学生時代から愛用モデルにしている5W(スリクソン Z-TX)のソール中央には、年代物のテープが何枚も重なって“化石”みたいになっている。3W(テーラーメイド M5)はというと…フェース近くのソールに細長い極小の銀色を発見! 第三者があえて言おう。…これ、ホントに意味あんの!?
極小の鉛で言えば、パターに施す細工はさらに常軌を逸している。上の写真をよーく見てほしい。お馴染みのマレット型パター(オデッセイ ホワイト・ライズ iX #3SH)のソールに埋め込まれた2つの円形ウエートの中央に5㎜角の”異物”が…(しかも1つだけ)。重量、実に0.2g以下。その変化にも星野はこだわる。
接着剤の量まで厳格だ
ところで先ほどのチューニングセットの中に、小さく、細く切り刻まれた鉛の束があった。目を凝らすと、ところどころ角が落ちていたり、シワがついていたりする。星野が解説。「コースによって重心の位置の感覚が微妙にズレることがある。ある試合で使ってみた鉛が、次の試合ではいらないときがある。でもその次の試合でまた必要になったら、すぐに貼り直せるようにキープしてます。細さも1mm変わるだけで自分にとっては違うんで」 つまりは…切り貼りした鉛の再利用を日常的に行うというわけか。SDGsか何かのつもりなのか、ただ物持ちが良いだけのか、もうよくわかんなくなってきた。