筋トレがダイエットに効果的な理由 2000年以降に発見された物質がきっかけでメカニズム解明
筋トレは太りにくい体もつくる
そのような物質が筋肉の中に存在することにより、筋肉を動かさなくても体温維持ができるというのは、哺乳類の重要な特性の一つと言えるでしょう。 サルコリピンは筋肉研究の分野でもまだまだ注目されていくと考えられますが、このタンパク質の発見は、筋肉を鍛えて維持することの重要性を広く世に伝えるきっかけにもなったと思います。 筋肉が増えると、基礎代謝や活動時の代謝が上がることがはっきりわかったので、最近では「筋トレはダイエットに効果的で、太りにくい体をつくることにもなる」という考え方もかなり浸透してきました。 一方、かつて主流だった「食事制限でカロリーを減らせばいい」「運動で脂肪を落とせばいい」というダイエット法で無理をしすぎると、筋肉が落ちて熱を生み出す働きも低下してしまい、結果として「リバウンドしやすい体」「ダイエットしにくい体」になってしまう可能性があることも新たな常識として定着しつつあると思います。 ヒルが発見した性質や非震え熱産生などは、人間が生きていく上できわめて重要なものです。今のところ、筋肉と同じようなものを人工でつくることはできません。そのくらい筋肉は完成度が高く、神秘的なものだと言えるでしょう。
※本記事は2018年に公開されたコラムを再編集したものです。 【解説】石井直方(いしい・なおかた) 1955年、東京都出身。東京大学名誉教授。理学博士。専門は身体運動科学、筋生理学、トレーニング科学。ボディビルダーとしてミスター日本優勝(2度)、ミスターアジア優勝、世界選手権3位の実績を持ち、研究者としても数多くの書籍やテレビ出演で知られる「筋肉博士」。トレーニングの方法論はもちろん、健康、アンチエイジング、スポーツなどの分野でも、わかりやすい解説で長年にわたり活躍。『スロトレ』(高橋書店)、『筋肉まるわかり大事典』(ベースボール・マガジン社)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など、世間をにぎわせた著作は多数。