「人を好きになる気持ちがよく分からなかった」33歳が“この人と手をつなぎたい”と思った理由
「手をつなぎたいと思ったのは初めて」
連日、龍児さんの香星さん宅通いが始まった。「やっぱ好きやわ~」と隠すことなく打ち明け続けていた龍児さんは5月11日、彼女宅で意を決したように「好きなんで付き合ってください」。年齢的に「お付き合いするなら結婚を視野に」と考えていた香星さんも「はい」と応じた。 過去の交際で「人を好きになる気持ちがよく分からなかった」香星さんだが、デートで「一緒に歩いていて手をつなぎたいと思ったのは初めて」と彼への好意を実感する。両親が離婚した経験を持つ彼女にとって、龍児さんは「家族の温かみを感じる人」だったのだ。
プロポーズは憧れの場所で
交際記念日の今年5月11日。京都市内でのデートを楽しんだ後、ホテル最上階の展望レストランへ。約90分でフロアが1周し、市内を360度展望できる人気の店で、香星さんは以前から「行ってみたい」と話していたが、龍児さんが「僕の給料ではとても」と渋っていた場所。それだけに彼女には「もしかしたら」と予感めいたものもあった。 メインディッシュが終わるとフタつきの皿がテーブルに。開けるとリボンがかかった四角い箱の中に婚約指輪代わりの時計が。デザートの皿にはチョコレートで「Will you marry Me?」の文字。彼女は驚き、万感胸に迫って、涙を流しながら「はい」と応えた。
「ぶっ飛んだ自分を理解してくれる」
10月28日、日付が変わった直後の区役所で婚姻届を提出。午前中に挙式し、午後5時から自由参加型の披露宴イベント「豆腐屋の晴れ舞台」を開催した。近くに住む人のほか観光旅行中の外国人らも参加。近隣飲食店の協力で、「夫婦」にちなんだ料理2200食が供される一大催事に。 龍児さんは「こんなイベントを考えるような、ぶっ飛んだ自分を理解してくれるなんてすごい」と香星さんに感謝。悩んでいても前向きにアドバイスしてくれる彼女を伴侶に「自分の子どもだけでなく、地域の子どもにも夢を与えられる豆腐屋になりたい」と夢を描く。彼の課題は苦手な飛行機を克服することか。香星さんは「北海道か沖縄に新婚旅行に行きたいけれど……」と苦笑い。 空を飛べるようになった暁には、その苦笑もきっと、満面の笑みに変わるだろう。
「週刊新潮」2024年11月28日号 掲載
新潮社