会社の「本店所在地」はどう決める?信用力や運営効率に直結する重要事項【司法書士が解説】
会社を設立するとき、定款に必ず記載しなければならない項目の一つが「本店所在地」です。本店所在地は単なる住所ではなく、会社の信用力や運営効率、そして今後の成長に直結する重要な要素となります。本店所在地の役割や決定時のポイント、注意すべき事項について、加陽麻里布氏(司法書士法人永田町事務所 代表)が解説します。
本店所在地とは?
本店所在地は、会社の「主たる事務所」、つまり法的な拠点を指します。この所在地は定款に明記され、会社の基本情報として登記事項証明書(公的記録)に登録されます。会社の活動や管理において中心的な役割を果たします。 【本店所在地の主な役割】 1.管轄法務局を決定する 商業登記を担当する法務局は本店所在地によって決まります。 2.税務や行政の基準を設定する 法人税や消費税などの申告先である税務署も、本店所在地を基準に決まります。また、社会保険や雇用保険の管轄も影響を受けます。 3.取引先や金融機関に与える印象を左右する 本店所在地は、取引先や金融機関に与える信頼感にも影響します。例えば、都心の住所はブランド力を高める一方で、地方の住所はコストを抑えることに適しています。 4.公的な企業情報として公開される 本店所在地は、登記情報や取引情報として広く公開されます。そのため、信用力やセキュリティを考慮した選定が必要です。
本店所在地の記載方法
本店所在地の定款記載には、具体性に応じた柔軟な選択肢があります。 1.市区町村までの記載 例)東京都渋谷区 市区町村までの記載に留めることで、詳細な住所(番地や建物名)をあとから確定することができます。将来的に同じ区内で移転する場合は手続きが容易になり、定款変更を避けられるため、定款には最小行政区画まで記載します。 2.詳細な住所まで記載 例)東京都渋谷区〇〇町1丁目1-1 △△ビル3階 詳細な住所を記載する場合は、オフィスの所在地が確定している場合に向いています。本店移転時には同区内であっても定款変更が必要になります。 柔軟性を重視するなら「市区町村まで」の記載がおすすめ 設立直後は、事業計画やオフィスの契約が流動的である場合が多いため、まずは市区町村までの記載にしておくのがよいでしょう。また、設立企画段階においても、まずは市区町村までの記載にしておき、詳細な住所は登記申請までに確定するのが安全です。