「心を動かされた」驚きでしかないコモのビッグプロジェクト。「ディズニーのような組織に…」セスクと歩む覚悟の1年【コラム】
⚫️「心を動かされた」セリエA仕様となったコモ
今夏、コモはセリエA通算112得点のボンバー、アンドレア・ベロッティ、センターバックのアルベルト・ドッセーナ、元スペイン代表サイドバックのアルベルト・モレノ・ペレスといったレギュラー候補を手に入れ、セリエA仕様にチームを整えた。この移籍市場においても、コモは世間を驚愕させる。フランス代表として93試合の実績を誇るラファエル・バランを獲得し、欧州全土にコモの名を轟かせた。 マンチェスター・ユナイテッドを契約満了で退団したとはいえ、まだ31歳と決して技術が錆びついたわけではない。「世界的レベルのプロジェクトに心を打たれ、そして、ファブレガス監督によって心を動かされた。とりわけ、交渉で問題になったことはなく、サッカーについて話し合い、監督のサッカー哲学に感銘を受けた。監督とは共通の考えを抱いている」と世界最高峰のDFもクラブの推し進めるプロジェクトに魅了され、入団の運びとなった。 コモのプロジェクトに賛同するのは、選手だけではない。ユニフォームは今季から世界有数のスポーツブランドのアディダスが、複数年契約でオフィシャルサプライヤーとなり、フードデリバリーで瞬く間に世界的企業となったウーバーがイタリアサッカー界で初のオフィシャルスポンサーとなった。クラブ公式代表のインドネシア人、ミルワン・スワルソは、こう語る。
⚫️「クラブをディズニーのような組織にしたい」
「我々にとって、"ビジネス"とは、お金を作り出すための用語ではない。サッカークラブを持続可能とすべき、異なるすべての部門を束ねるための用語だ。クラブはもはや独立した存在であってはならない。社会的背景に組み込まれるべきだ。スポーツの結果にとらわれるのではなく、経済的波及効果や周囲の成長にも、良い影響をもたらすことが必要なのだ」と経営哲学を明かす。 イギリスメディアのBBCは「ヨーロッパで最も魅力的なプロジェクト」と評価する。そのプロジェクトの中には、当然、新スタジアムの構想計画も含まれる。スワルソは、「月に2、3度、試合が行われるクラブのためだけのスタジアムではない。商業・医療施設が付属するコモ市のためのスタジアムだ。じきに、オーナーからコモ市にスタジアム計画案が提出される」と自前のスタジアム誕生にも胸を膨らませる。 さらに、「クラブをディズニーのような組織にしたいと思っている。テーマパーク、映画、スタジオ、メディア、そしてマーチャンダイジング。これらすべてが一つの段階でつながっている。それと同じことを我々はコモでもやらなければならない」とクラブが、エンターテイメント性に富んだ組織でならないと強調した。 開幕節は“イタリアの恋人”ユベントスにアウェイで0-3と、残念ながら敗戦を喫した。チアゴ・モッタを新監督として迎えたチームは今夏のプレシーズンマッチで、セカンドチームのユーベNextGenを相手にしか勝利を掴み取ることはできず、まだチームの再建が道半ばといった印象だったが、さすが、そこはセリエA最多優勝を誇るチームだ。 セリエA開幕の前にはコッパ・イタリア予選1回戦で、セリエBのサンプドリアにPK戦の末に敗れはしたものの、相手を終始上回るパフォーマンスで、悲観するような試合内容ではなかったコモ。また、プレシーズンマッチでは、カリアリに3-1で勝利し、ドイツのボルフスブルクには0-0と引き分けている。 UEFAライセンスを取得して、晴れて正監督となったファブレガスのサッカーは、間違いなく相手の脅威となるだろう。今度は、コモのサッカーを初めて目にするサッカーファンが、驚きの声を上げることになるに違いない。 (文・佐藤徳和)
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