「AOMORI GOKAN アートフェス 2024 つらなりのはらっぱ」開幕レポート!個性豊かな青森の5つの現代美術館に出会いなおす旅へ
いまこの場にたどりつくことの不思議:青森公立大学 国際芸術センター青森(ACAC)
青森公立大学 国際芸術センター青森(ACAC)は、安藤忠雄建築の円形をした、滞在制作できるアートセンター。ACACを「はらっぱ」として考えたときに、「アーティストが滞在制作するACACは様々な流れを受け止める巨大な円形の装置みたいな場所」と語るキュレーターの慶野結香。メイン企画「currents / undercurrents -いま、めくるめく流れは出会って」では、現在という意味を持ちながら、海流、気流、電流などの流れも意味する『currents』と、目に見えない歴史や記憶『undercurrents』に着目し、青森という場所で変化し続ける今を問う。 展示室外の水辺に設置されている光岡幸一《ししおどし⦆の音に驚く。津軽民謡を教わり、独特のこぶしが口の中の空洞で声を回転させることを知った光岡。何分かに一度、水が吸い上げられ、大きな音を立てて水しぶきが舞う。 介護者のためコロナ禍で人と会えず、親しい友人の死去を遅れて知ったという中嶋幸治。青森在住、りんご農園で働く中嶋は「りんごの花を見てみたい」という友人との約束を果たすために、追悼の旅へ向かう。花をにぎりしめたこぶしを10分間に一度撮影。 地域で集めた家具や古道具を材料に作品をつくる青野文昭。譲られた長持からミサイルを連想。つねに収奪され支配されてきた東北の歴史、核処理施設や青森三沢基地、歴史と現在の状況や記憶が交差していく。 緊急事態宣言の頃に福島から青森の桜を撮影し、かつて桜の頃に亡くなった妹を思い出したという岩根愛《忘れたことを忘れる》は、満開の桜に妹の写真が投影されている。 AOMORI GOKAN アートフェスメインビジュアルでもある《The Opening》は、岩根が高校時代を過ごしたカリフォルニア北部マトール川が秋に雨が降り出すと決壊し、海と混ざる地点をドローンで撮影。渦を巻き、白波が立つ映像を眺めながら、様々な流れの中でいまこの場に流れ着いていることの不思議さに思いを馳せる。