「AOMORI GOKAN アートフェス 2024 つらなりのはらっぱ」開幕レポート!個性豊かな青森の5つの現代美術館に出会いなおす旅へ
近代化された人と自然の関係を問い直す:十和田市現代美術館
「人間が自然にしてきたことを根本的に考え直すためには、近代的な主体としての人間のあり方を壊し、新たに作り直す必要がある」と語る、十和田市現代美術館の外山有茉。「野良になる」では、排除された存在に目を向け、野生でも飼われるのでもない「野良」として、近代化された人と自然の関係を問い直す。 「文明化された社会は、綺麗で安全な場所に思えるかもしれないけれども、その裏に残酷さや犠牲になったものがある」という丹羽海子。害虫として駆除される存在であり、丹羽の孤独の象徴でもあるコオロギが、ゴミでできた街を行き交う。 䑓原蓉子は、青森や日常生活のなかで感じる自然をテキスタイルで表現。「ウールは呼吸して、気温や湿気で変化する。途中であることが自然でもある」という言葉から、自らも自然の一部として関わるあり方が伺える。 永田康祐によるアニメーション作品《鮭になる》は、養殖場の鮭の視点から見た世界を描いた作品。現代的なシステムの中では、人も飼いならされていることなど「飼い/飼われるもの」という関係性をユーモアと共にずらす。 著者がいちばん感銘を受けたのは、アナイス・カレニン《植物であったことはない》。複雑な世界に生きる植物との関係を問い直し、新しいコミュニケーションを探る。タイトルには、植物は自分自身を植物と思ったことはなく、近代化の中で人が植物を分類したこと。人間自身も近代化の流れの中で自らを植物でも動物でもない「人間」と言ってきたという意味が込められる。中庭には、リサーチで出会った植物が植生され、植物を生活の一部として生きてきたアイヌの呼び名が音に変換されスピーカーから流れる。その音を聞きながら植物たちが育っていく。
アートが育ち、変化していく畑:八戸市美術館
八戸市美術館の中心にある大きな吹き抜けの「ジャイアントルーム」。ここでは「アートファーマー」という美術館に関わる市民活動が行われており「出会いと学びのアートファーム」という館のコンセプトを象徴している。そうした活動はまさに「はらっぱ」のようであるとして、メイン企画「エンジョイ!アートファーム!!」を実施。「ジャイアントルーム」を舞台に八戸を拠点に活動する5人のアーティストが期間中「いつ来ても何かが起きている」作品制作を展開する。それぞれの活動は、訪れた人とともにどんどん変化しまざり合いながら、風景が立ち上がっていく。