ガパオだけで130種類以上集めた本の著者にインタビューしたら奥が深すぎた【タイ料理好き必読】
──ポロポロ肉にNGが出たと。でもこれ、一般の日本人がイメージする「ガパオ」としては普通とも言えますよね。その一件で夫婦げんかになったりはしなかったんですか? 下関:まさか! ウチにはリングがないですから(笑)。ふだんダンナは料理に文句を言うような人ではないし、そもそも味付けではなく肉の状態にダメ出しされたのが、「え、そこ?」と、かえって引っかかってしまって。 あと、ダンナは料理のプロでも食通でも何でもないですが、いわば「タイ料理ネイティブ」ではあるので、そのダンナが違和感を覚える線引きラインが私にとっては新鮮だったんです。 ──なるほど。「ネイティブ」という言葉が出ましたが、語学でも、文法的には間違いではないけれど、ネイティブはこういう言い方はしない、とかありますよね。 長らく下関さんの活動を拝見していますが、外国料理や食文化に対する教科書的な態度と一線を画すような部分があって、常に「料理のネイティブチェック」を受けられる環境が、それに一役買っているようにも思います。 下関:そうかもしれませんね。
──その後は、かたまり肉を包丁でたたいて、粗びき肉にする、という調理法でガパオを作るようになったんでしたね。 下関:そうなんです。ただ、かたまり肉をたたいて粗びきにしてもいいし、大きめに切り分けた肉をガパオにしてもいい。ミンチ肉を使う場合は「そぼろ状」にしないように炒めるなど、いろんな作り方があるんです。 逆に「そぼろ状」に炒めて、パスタやセンヤイ(タイの幅広麺)とあえるとか、さまざまなスタイルのガパオに応用する調理法を今回の本では幅広く紹介しています。
まだ日本人が知らないタイ現地の定番ガパオたち
──かたまり肉をたたくスタイルといえば、『ガパオ タイのおいしいハーブ炒め』の表紙に掲載したガパオがそうでした。撮影が終わったあとにいただきましたが、すごくおいしかったです。これは牛肉なんですよね。 下関:日本では「ガパオ=鶏ひき肉炒めの目玉焼きのせ」というイメージがありますが、タイでは豚肉や牛肉でも作りますし、イカやエビなど魚介類のガパオもよく食べます。 ガパオタレー(海鮮ガパオ)と呼ばれる、イカ、エビ、ムール貝などの海鮮五目ガパオや、ガパオルアミット(ミックスガパオ)というメニュー名の魚介類とひき肉を混ぜたガパオも、タイの定番です。