日本の常識が通じない小池都知事「学歴詐称疑惑」、現地取材の黒木亮氏「日本人は書類を信じすぎ。エジプトの実態は違う」
――カイロで取材を重ねる中で学歴詐称を確信するようになったのですか。 決定的だったのが、卒業論文についての証言です。 小池氏は「社会学科に卒論はなかった」と2020年3月の都議会で答弁したり、『女帝』著者である石井妙子氏の取材に弁護士を通じて回答したりしています。 しかし、小池氏が卒業したと称しているのと同じ1976年に文学部社会学科を卒業したエジプト人の教授に聞くと、「社会学科では全員が卒業論文を書かなければならなかった」と明言し、具体的に彼や級友の卒論の中身を説明してくれました。
――不正が横行しているといっても、カイロ大学の卒業生すべてに当てはまるわけではないのですね。 カイロ大学の進級試験自体は比較的厳格で、金やコネのない学生は留年も当たり前です。僕が会った日本人の卒業生はいずれも留年を経験していました。 ――卒業したことにできるような事情は何か小池氏にあったのですか。 小池氏は父親などを通じてエジプト副首相だったアブデル・カーデル・ハーテム氏とのコネがありました。父親は中曽根康弘氏や中谷武世氏(元衆議院議員、日本アラブ協会会長)など、日本の有力政治家と付き合いがあったので、日本に食い込もうとしていたハーテム氏が、彼らの頼み事を聞いたのかもしれません。
一度記録が書き換えられてしまえば、その後カイロ大学で対応する人たちは記録に従って回答したり、書類を作成したりしているだけなのでしょう。小池氏の場合は、エジプトの国益がらみなので、躊躇はまったくないのだと思います。 サダト、ムバラクと軍事政権だったエジプトは2011年に「アラブの春」で民主化しましたが、クーデターが起きて軍事政権に戻っています。実質財政破綻状態で、エジプトとカイロ大学にしてみれば、日本から巨額のODA(政府開発援助)を獲得するために小池氏を利用できます。
■「カイロ大声明文」で日本のメディアは沈黙 ――前回の都知事選の告示直前の2020年6月、在日エジプト大使館のFacebookに「小池氏の卒業証書は正式に発行された」とのカイロ大学の声明文が掲載されました。掲載されたのは、現地取材をもとに記事を執筆していた黒木さんが、郷原信郎弁護士と一緒に日本外国特派員協会での記者会見に臨む2時間前のことでした。 当時、都議会では、自民党が小池知事の学歴詐称問題を熱心に追及しており、卒業証明書類を提出するよう求める決議案を提出するところまで行きました。しかし、カイロ大学から声明が出たことで、小池氏の庇護者だった二階俊博自民党幹事長(当時)から「エジプト政府とことを構えることになるからやめろ」と圧力をかけられ、都議会自民党は決議案の提案者から降りたと関係者から聞いています。