1日500歩でもいい! 精神科医・和田秀樹が勧める「老けない習慣」
文/印南敦史 歳をとれば当然ながら、体力は落ち、力も衰えていくものだ。事実、日常生活を送るなかでそのことを実感している方も多いことだろう。 しかし不思議なのは、たとえ同年代だったとしても、“老ける人”の一方には、“体も見た目も若々しい人”がいるという事実である。はたしてなにが、両者を分かつのだろうか。 その謎を探るためにも、そして、よりよい日々を送るためにも参考にしたいのが『老けない習慣ベスト100』(和田秀樹 監修、総合法令出版)。長らく高齢者医療に携わってこられた精神科医の和田秀樹さんが、医師や大学などの研究機関から発表されている「老けない習慣」をまとめた、実用性の高い書籍である。 守備範囲はとても広く、脳の老化を防ぐ思考、行動、アンチエイジングに効く食べ物や栄養、若々しい体力を維持するための運動やボディケア、ストレスをためない人間関係など、さまざまな領域において知っておくべき100の習慣が紹介されている。 ところで、老いを感じれば、なにかと不安になってくるものである。だが、実はそれほど心配はいらないのだと和田さんはいう。 <人間の体は使い続けることで、レベルを維持することができます。生活習慣等を見直していくだけで、老化を遅らせることができるのです。(本書「はじめに」より)> つまり、ここで紹介されている「老けない習慣」を参考にしながら、日常的に脳や体を使えば、“体も見た目も若々しい人”になることも不可能ではないということなのだろう。 今回は第4章「老化を予防する運動とボディケア」のなかから、「歩く」ことに関するトピックを抜き出してみたい。 <健康維持のために効果的といわれているのがウォーキングです。基本的には“歩く”だけで、簡単かつ心拍数が上がって血流が良くなり、血糖値も下がり、内臓脂肪の燃焼や下半身の筋肉を鍛えられる等々の多くのメリットがあります。(本書156ページより)> たしかにウォーキングの効能はしばしば話題に上るものであり、それを否定する方もいないだろう。ただし、そこでハードルになるのが、あたかも越えなければならない壁であるように強調されがちな「1日1万歩」という目標である。 もちろんそれだけ歩くことができれば理想的ではあるが、実際のところ、これをクリアするのは至難の業でもある。 しかし和田さんは、無理をして1万歩を目指す必要はないと述べている。それほど歩かなくても、健康効果は十分に得られるという研究結果が出ているそうなのだ。 <アメリカの研究では、8000歩くらいまでは、歩けば歩くほど寿命が延びる傾向にあり、それ以上ではあまり変わらないという報告が出されています。 日本では、群馬県中之条町の高齢者5000人を対象に、15年にわたって生活行動データを集めた「中之条研究」が知られています。この研究によると、1日に20分間の早歩きウォーキングを数回行い、そのトータルを8000歩にするのがベストだと結論づけられています。(本書156ページより)> とはいえ日常的に歩く習慣がなかった人にとっては、「1日に8000歩」もまた現実的でなさそうではある。健康にいいのだろうなとわかってはいても、やはり高いハードルであることには変わりないのだ。 だが、これは決して「1日に8000歩がクリアできなければ意味がない」ということではなさそうだ。 <ポーランドのウッチ医科大学の研究では、1日に1000歩多く歩くだけで、何らかの原因で死亡するリスクが15%低下することが明らかになったそうです。1000歩が難しい場合は、500歩でも歩くと、心疾患の死亡リスクが7%下がるとのこと。(本書157ページより)> もちろん人によって差はあるだろうが、一般的に500歩なら5分程度で歩けるのではないだろうか。歩きなれない人だとしても、10数分でクリアできるに違いない。 つまり最初から無理をするのではなく、まずは500歩を目指してみるだけでもいいということだ。そして慣れてきたら、1000歩まで増やしていけばいいのである。 <健康長寿を手に入れた人は、早死にする人と比べると、毎日歩いていることは確かなようです。(本書157ページより)> 重要なポイントはこの部分。歩数の多さを意識すること以前に、まずは少しずつでいいから「歩く習慣」を身につける。それこそが大切なのだ。 『老けない習慣ベスト100』 1430円 和田秀樹 監修 総合法令出版 文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。
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