持続可能な観光にも貢献し得るサーキュラーエコノミーとは? 九州電力らが「サーキュラーパーク九州」を稼働開始、目指す未来と提言を聞いてきた
日本独自のゴミマネジメントもコンテンツに
資源循環の取り組みについては「日本は、海外と比べて遅れている」というイメージを持つ人も多いかもしれない。また、日本を訪れた欧米の外国人旅行者が、日本人が頻繁にペットボトルや缶の飲料が購入していることに驚き、「日本人はゴミをたくさん出している」という印象を持つという話も聞かれる。しかし、こうした話だけで「欧米と比べて日本が特に大量廃棄をしている」と解釈するのは早計のようだ。「そこにあるのは分別のスキームの違い」と中台氏は語る。 「海外ではセンター集約方式が多いですね。これは『リサイクルする・しない』程度に分別したゴミを自宅の前に出すと大きな収集車が回収に来てセンターで選別するというもの。一方、日本式は『市民が何種類にも分別したゴミを集める』というもの。日本式だとレベルの高い再生資源ができます。これを海外に広めることができれば広域の資源循環ビジネスができますし、リサイクルしやすい商品も海外で売れるようになる」 2021年のバーゼル法の改正で海外に廃棄プラスチックを輸出できなくなったこともあり、今後は「ゴミをどこに捨てるか」が問題になると言われている。資源枯渇を防ぐためにも、資源循環はあらゆる業界が取り組むべき問題だ。日本方式のごみ分別や資源循環に関する日本ならではのスキームや知見、技術をコンテンツと位置付け、海外からの視察や研修を受け入れることも十分可能だろう。 最後に中台氏に今後の展望を語ってもらった。 「最終的にはcpqを仮想大学にしたいと思っています。資源循環やサーキュラーエコノミーを体験しながら学ぶことができる場所。今後、日本各地で廃止される火力発電所は増えるでしょう。火力発電所があるような場所は岩盤が頑丈ですし、セキュリティも頑丈ですから、企業が守りたい技術や実験プロセスを守ることもできます。こうした火力発電所跡地を廃墟にせず、cpqのような施設を作れたらいいですね」 既存のビジネスに何をプラスし、社会を変えるきっかけを作る「2割」の存在となるのか。観光産業においてもこうした視点は今後さらに求められていくことだろう。 取材・記事 フリーライター 吉田渓
トラベルボイス編集部