国民民主が自公に迫る「手取り増」 専門家が「生活の助けになるが、年収の壁解消の決め手にはならない」断言する理由
国民民主の施策は生活の助けになるが、年収の壁解消策ではない
――その国民民主の「手取り増」は、パートタイムに所得税が発生する課税ラインを「103万円」から「178万円」に引き上げようというものです。自公と国民民主の合意でこの案が成立したら、年収の壁問題は解決すると思いますか。 川上敬太郎さん 年収の壁は、その金額を超えないように抑えているから「壁」と表現されるのです。しかし、所得税がかかる103万円という給与収入の目安は、「壁」というよりは「底」です。103万円の底を178万円に引き上げれば減税となり、手取りを増やす効果が期待できます。 しかし、だからといって年収の壁を解決する施策にはなりえません。年収の壁は、103万円であれば先ほどのコメントにもあったような家族手当が該当します。それは各社個別の制度なので、それぞれの会社が手当のあり方を見直さない限り解消されません。 また、年収の壁・支援強化パッケージの対象になっている106万円や130万円など働き損が発生する壁は社会保険のほうになります。家族手当も社会保険も、所得税とは全く別の話です。 ――しゅふJOB総研では、時給がもっと上がれば年収の壁が解決できるとして「時給相場の壁」を提案しましたね。ほかに解決策はないでしょうか。 川上敬太郎さん 時給相場の壁は、1500円を超えると6割の人が扶養枠を外すと回答した調査結果をもとにお示ししたものです。石破茂首相は2024年10月1日の就任会見で「2020年代までに最低賃金1500円を目指す」と述べているので、もしそれが実現すれば多くの人が年収の壁を気にせず働きやすくなると期待できます。 ただ、そもそも年収の壁は扶養枠という制度の問題です。長年人々の生活の中に組み込まれてきた扶養枠という制度をなくす施策をとらない限り、抜本的な解消とはならないと思います。
働きたくても働けない人や、それぞれの人生設計への配慮を
――では、どうすればいいのでしょうか。 川上敬太郎さん 世の中には働きたくてもさまざまな事情で働けない人がたくさんいます。抜本的な解消に踏み込む場合、それらの方々への配慮が必要であることはもちろん、年金など人生設計に関わる問題でもあることも踏まえて、丁寧に時間をかけて進める必要があると思います。 ――今回の調査で、特に強調しておきたいことがありますか。 川上敬太郎さん 国民民主が掲げている103万円の底の引き上げは、物価高で家計が厳しい状況に追い込まれているなか、生活の助けになる施策だと思います。しかし、決して年収の壁を解消する施策ではありません。その点を混同しないよう、注意する必要があると思います。 (J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)