2026年までのアジア太平洋地域への旅行者数の予測レポート発表、成長幅トップ5は北東アジアが独占 ―PATA
太平洋アジア観光協会(PATA)はこのほど、2024~2026年のアジア太平洋地域における受け入れ海外旅行者数の見通しについて中間レポートをまとめ、年初の予測通り、旅客数が順調に回復しているとの見方を示した。 PATAでは、旅行市場を取り巻く状況を「マイルド」から「シビア」まで計3段階のシナリオに分けて、受け入れ外客数の動向を予測している。最も状況が安定しているシナリオでは、アジア太平洋の国・地域を訪れる外客数(域内の移動含む、延べ人数)が2019年実績を超えるのは2024年、中間シナリオでは2025年と予測している。 一方、最も厳しいシナリオでは、2024年の受け入れ外客数は2019年を31%下回ると予測。マイナス幅は縮小していくものの、2026年になっても同13%減としている。 なお、PATAでは同レポートとは別に2024年6月末、ビザやユーロモニター・インターナショナルの協力を得て、地域や国ごとに将来動向を詳しく考察したデスティネーション・レポート「Asia Pacific Destination Forecasts 2024-2026」を発表している。 PATAのCEO、ヌール・アフマド・ハミド氏は「今のところ、プラス成長が続いており、強気の予測が多勢を占めている。ただし、厳しいシナリオ予測が示す通り、危機が完全に去ったわけではない」と警鐘を鳴らす。「地政学的な緊張、気候変動、経済的な先行き不透明感が、アジア太平洋の観光産業の成長を阻害する要因となり得る。引き続き、イノベーションを推進し、こうした課題解決に取り組む必要がある」との考えを示した。 アジア、アメリカ、太平洋の各エリア別に見ると、回復ペースには差があるものの、「マイルド」シナリオでは、3つの地域すべてにおいて、2024年の受け入れ海外客数は2019年を超え、2025~2026年もプラス成長が続くと予測している。 これに対し、最も厳しい「シビア」シナリオでは、回復傾向ではあるものの、そのペースは緩慢で、受け入れ外客数が2019年実績を超えるには2026年末までかかるとしている。 予測値の中間「ミディアム」シナリオによる域内エリア別の予測によると、2024年の受け入れ外客数が前年比10%以上に増えるのは、計11に分けた小区域のうち8区域。このうち最も増加率が高いのはミクロネシアで77.8%、次いで南アメリカ(47.0%)、東南アジア(36.0%)。人数ベースで最も伸びが大きくなるのは北東アジアで4460万人増、次いで東南アジア(3620万人増)、北米(1270万人増)としている。 こうした需要を創出する送客マーケットとして、2024年に存在感を示しているのは北東アジアだ。同年の送客数が最も増えるのは中国で、前年比で3590万人増。次いでマカオ(850万人)、韓国(760万人)と予測している。 2023~2026年の送客マーケット予測でも、最も成長幅の大きい国・地域の1~5位までを北東アジアが独占した。この間、アジア太平洋地域への主な送客市場である7か国・地域からの旅客数は1億1100万人以上増、このうち北東アジア以外は米国のみとしている。 さらに、同期間のアジア太平洋地域への外客数の伸びは2億5830万人と予測、このうち60%と過半数を北東アジアが占めるとしている。 なお、計39のデスティネーション別の予測レポートでは、送客市場、シーズナリティ、航空座席の供給動向など、多岐にわたる項目別に詳細な考察を行っている。 ハミド氏は「今回の中間レポートからは、最も厳しい予測シナリオになったとしても、プラス成長で推移していくことが示される結果となり心強い。この地域を訪れる海外旅行者数が増えることは、さらなる経済効果にもつながるはずだ。ただし、ツーリズム産業の回復と成長を、訪問客数の増加だけで実現しようとしていた時代に逆行することは許されない。観光産業のステークホルダーが、この好機を生かし、数だけでなく、レスポンシブルかつサステナブルな成長に力を入れること、そして観光体験の質、環境保全、地域社会へのエンゲージメントにフォーカスすることが極めて重要になっている」とコメントしている。 正式版のレポートは以下から入手できる(有料)。 ▼PATA 「Asia Pacific Visitor Forecasts 2024-2026: Mid-year Report」 https://www.pata.org/research-q1v63g6n2dw/p/asia-pacific-visitor-forecasts-2024-2026-midyear
トラベルボイス編集部