藤井聡太「八冠」254日で陥落 「藤井を泣かせた男」伊藤七段が新叡王…21歳で同学年
将棋のすべてのタイトルを独占していた藤井聡太八冠(21)が、20日に叡王戦で逆転負けし、叡王を失いました。無敵を誇った藤井八冠を破ったのは、21歳で同学年の伊藤匠七段でした。 【画像】当時小学3年生の伊藤新叡王と藤井聡太七冠 当時から“ライバル”
■“超人的一手”攻め続け…AI予測で最善手
23期連続のタイトル獲得へ、苦しい展開が続いていた藤井八冠。今回の叡王戦五番勝負では、タイトル戦で初の連敗を喫し、崖っぷちの“カド番”に追い込まれました。 相手は藤井八冠と同じ21歳で、粘り強い将棋を得意とする伊藤匠七段。第4局は藤井八冠が勝利し、決着は第5局までもつれます。 勝ったほうが叡王となる20日の最終局。先手は藤井八冠。これまでの4局と同じく、互いの角を取り合う「角換わり」で始まります。 序盤・中盤で伊藤七段が持ち時間の半分使い切る一方、藤井八冠は3時間以上残し、有利な展開が続きます。 そして、77手目、藤井八冠は大きな勝負に打って出ます。 伊藤七段の歩の前に、自分の銀を差し出す意外な一手。将棋ライターの松本博文氏は、「超人的」だと話します。 松本氏 「この手は本当にびっくりしましたね。この手は本当にさすが藤井叡王という一手でしたね。思いつかないですよ、普通」 しかし、一見、銀を簡単に取らせてしまう悪手に見えるこの手。AIの予測では最善手でした。 攻めにも守りにも使える貴重な銀をあえて取らせ、桂馬を打ち込むスペースを作り、相手陣への突破口を作ったのです。
■藤井八冠が猛攻撃…伊藤七段は読み切る
形勢判定は一気に藤井八冠優勢へ。勝負を決めにかかる藤井八冠に対し、粘る伊藤七段。そして、勝負を分ける一手が生まれます。 藤井八冠が7三角成と攻め入ったのに対し、伊藤七段は取られそうな8一の飛車を動かすのではなく、5二銀と指すことで「玉」の逃げ道を作ったのです。 そこから藤井八冠に「王手飛車取り」の7二馬を指されますが…。 松本氏 「王手飛車取りはしかたないんですが、あえて王手をかけさせることによって、王様(玉)を逃していったと。苦しいところでどうやって粘る順を選べるかというのが、強い人の持ち味。そこで勝負が決まると思います」 この手を受けて藤井八冠は、右手で足をたたいて悔しがるようなしぐさも見せました。 藤井八冠は攻めの勢いを弱め、伊藤七段が攻勢に転じます。形勢はみるみるうちに逆転。自陣深くに玉を置く「穴熊戦法」で、伊藤七段の攻めを耐え続ける藤井八冠。しかし、逃れることができず、藤井八冠は王手をかけ続けなければ、敗れてしまう状況になりました。そして…。 藤井八冠 「負けました」 9時間半の熱戦を、伊藤七段が制しました。 藤井八冠からタイトル奪取 伊藤“新”叡王 「全体的に苦しい将棋が多かったと思うので、運が良かったかなと思っています」 絶対王者がついに冠を1つ失い、藤井七冠に。2020年に17歳で初めてタイトルを獲得してから4年。タイトル連続獲得は22期で止まり、八冠保持は254日で終わりました。 “八冠独占”から陥落 藤井七冠 「終盤でミスが出てしまう将棋が多かったので、結果もやむを得ないかなと思っていますし」「(Q.タイトル戦で敗退するのは初めてだが?)いや、それは時間の問題だと思っていたので、あまり気にせずにこれからも頑張っていきたいと思います」