「これがすべて!」「限界超えてた」高石あかり&伊澤彩織が振り返る『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』壮絶アクションの舞台裏
インディーズ映画界で独自のアクション道を追求してきた阪元裕吾監督と、主演コンビの高石あかり&伊澤彩織の名を世に知らしめた人気アクションシリーズの最新作『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』が公開された。 【写真を見る】お互いへの信頼を語る「ベビわる」高石あかりと伊澤彩織 低予算ながら、脱力系殺し屋コンビのちさと(高石)とまひろ(伊澤)の日常を、ゆるゆるトークとソリッドなアクションの合せ技で描き、日本のアクション界に衝撃を巻き起こした『ベイビーわるきゅーれ』(21)。通称「ベビわる」はたちまち熱狂的なファンを生み、2023年には続編『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』が公開。さらに今年9月からは、テレビシリーズ「ベイビーわるきゅーれ エブリディ!」も放送されるなど、「ベビわる」ワールドは拡大を続けている。 宮崎県でロケを敢行した『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』には、格闘術も銃&ナイフの扱いも超一流、たったひとりで150人殺しの達成を目指す“史上最強の敵”・冬村かえで役の池松壮亮、殺し屋協会に所属する“ちさまひ”の先輩・入鹿みなみ役として前田敦子も新たに加わり、さらにパワーアップ。共にシリーズを駆け抜けてきた主演の高石あかりと伊澤彩織に、過激なアクションの舞台裏やお互いの印象をたっぷり語り合ってもらった。 ■「池松さん扮する冬村かえでには、圧倒的な強さがあるだけじゃなくて、いろんな要素が一つの役に詰め込まれているんです」(高石) ――ちさまひの“宮崎出張”はいかがでしたか? 高石「長年ご一緒している大好きな人たちと、地元に帰ってこられるなんて…。しかも皆さん、『プライベートで来たい』と言ってくださって。こんなにうれしいことはないです」 伊澤「『南の島に来ちゃったのかな?』って思うくらい、ヤシの木がたくさんありました。本当は焼酎を浴びるほど飲みたかったんですが、撮影中だからあまり飲めなくて…。ぜひ私もプライベートで遊びに行きたいです!」 高石「撮影中、フェニックス・シーガイア・リゾートに泊まっていたじゃないですか!」 伊澤「はい(笑)。ベッドが2つもある部屋に、3週間も泊まらせていただきました!」 高石「いいなぁ~。私だってこれまで1回しか泊まったことがないのに。宮崎県人からしたら夢のような話です」 伊澤「そういえば、ちょうど撮影の後半に差し掛かるタイミングで、高石さんのご家族が、給食みたいに大きな鍋で作った豚汁とおにぎりを差し入れしてくださったんですよ」 高石「『おかわりいる人~?』ってね! 監督がめっちゃおかわりしてました(笑)」 伊澤「あれは沁みましたね~。監督も『これですよ!』って」 高石「お弁当生活がしばらく続いていたうえに、アクションシーンの撮影もググっと佳境に入った頃だったから、みんなあったかいご飯を求めてましたよね」 伊澤「一口一口、噛みしめながらいただきました!」 ――お馴染みのキャストに加え、池松壮亮さんや前田敦子さんなど、新たなキャラも登場します。最初に3作目のキャスティングを聞いて台本を読んだ際、どう思われました? 伊澤「まさか池松さんと前田さんが『ベビわる』の世界に参加してくださるとは…!」 高石「『ヒェ~ッ!』って感じでしたよ。いまだに2人で『すごいねぇ~』って言ってるくらいですから。特に、池松さん扮する冬村かえでには、圧倒的な強さがあるだけじゃなくて、可愛らしさとか、人間味とか、いろんな要素が一つの役に詰め込まれているんです。阪元さんの作る台本は、漫画とか小説に近いというか。一つの作品として出せるレベルのものになっていて。アクションシーンも『この時〇〇はこう思った』みたいに細かく心情が書き込まれているので、物語の続きが気になって引き込まれてしまうんです」 伊澤「私は、ちさととまひろの気持ちも、かえでの気持ちも手に取るようにわかって、途中からもう胸が苦しくなっちゃって。嗚咽しながら『おもしろい…』って読んでました(笑)」 高石「アハハ(笑)!」 ■「阪元監督が『前作を超えなくていいんじゃないですか?』って言ってくれて、すごく楽になれたんです」(伊澤) ――お二人が思う、本作の見どころは? 伊澤「今回は『ちさととまひろが殺し屋としての仕事をしっかり遂行する話にしよう』という構想が阪元さんの中にあって。アクション監督の園村(健介)さんとも、『シリアスな殺し合いのシーンを入れたいね』という話はしていたんですよね。となると、今作の見どころはやっぱりアクションになるのかなぁ」 高石「それはもうアクションに尽きますよ! 序盤からぶっ飛ばしてますから」 伊澤「超ギアを上げていきました!」 高石「過去2作のアクションを超え…た?」 伊澤「分量的には超えた」 高石「とてつもなく!」 伊澤「手数は相当なものだったんですけど、むしろ今回は阪元さんの言葉に救われた部分も結構あって…。って、私、映画の見どころと全然違う話をしようとしちゃってた!」 高石「いやいや、私が気になるので教えてください(笑)!」 伊澤「『ベビわる』はアクションの評判が良かったから、2作目をやるからには、1作目を超えなければ!』って、メンタルを擦り減らしていた時期があって…。結果的に、1、2共に自分の限界を突破してきたのに、今回でそれをさらに更新するとなったら『どうすればいいんだろう?』『毎日頑張ってるだけじゃ無理!』と、またしても悩んでしまったんです」 ――なるほど。評判が良かったがゆえに、プレッシャーで追い込まれていたんですね。 伊澤「そんな時に阪元さんが『別に超えなくていいんじゃないですか?』って言ってくれて、すごく楽になれたんです。出来上がった作品こそが、その時々の『ベビわる』のチームで作った一つの完成形なわけで。今回の現場でも、それぞれが自分の身体に鞭を打ちながらも『全員野球だ!』って言いながらみんなで作り上げた結果がこれなんだから、『たとえ超えてても超えてなくてもこれでいいんだ!』って思えて」 高石「我がアクションに悔いなし(笑)! 『いま出せるのはこれがすべてです!』って」 伊澤「そう、まさにそんな感じ! 私は本当にキャッチコピー同様、『これで最後』のつもりで臨んだので。撮影開始後3、4日目の時点で限界は超えてたと思います」 ――まさしく、全身全霊の言葉がピッタリですね。 伊澤「と言いつつ、なんだかんだ言って一番楽しかったのは、“ちさまひ”がテントの中で二人きりで話すシーンだったりもするんですよね。『あっ! この長回しこそ『ベビわる』だ!』って、懐かしい気持ちになったので」 高石「たしかに。超本気のアクションとユル~い日常のギャップがいいんですよね」 ■「伊澤さんとは俳優の“高石あかり”としてではなく、心の奥のほうで話している感じがするんです」(高石) ――ひと足早く本作のドキュメンタリー『ドキュメンタリー オブ ベイビーわるきゅーれ』(10月4日公開)も拝見したのですが、傷ついた相棒を目の前にした時に湧き上がる感情は、もはや芝居であって芝居じゃないと言いますか…。おそらく役柄とご自身が一体になっているからこそ、スクリーン越しに伝わる瞬間が多々ありました。 高石「そうですね。ちひろにとってまひろがそうであるように、私にとっても伊澤さんは本当に特別な存在なので。だからこそ、いわゆる俳優の“高石あかり”としてではなく、心の奥のほうで話している感じがするんです。それはちさとでもあって、私自身でもあるというか」 伊澤「私は自分とまひろの感情がぐちゃぐちゃになって混乱する瞬間があるんですけど、あかりちゃんがちさととして引っ張り上げてくれるから、私もまひろに戻れるんですよ。あかりちゃんは、ちさとになった瞬間、いつも『どうなってんだ?』って思うくらい表情が変わるし、いきなり踊りだしたりするので。傍から見てるとおもしろいんですよね」 ――“ちさまひ”と同様、高石さんと伊澤さんにも仕事を超えた絆が芽生えているわけで。この二人の組み合わせじゃなかったら、果たしてここまでの展開になっていたかどうか。 高石「たしかに~! 伊澤彩織じゃない深川まひろなんて、もはや想像さえつかないです」 伊澤「奇跡を生み出してますよね。改めて振り返ると、とても幸運な出会いだったなぁ」 高石「『幸運な出会い』って言葉、素敵!」 ■「これからは身体の動かし方自体も変えていかなきゃいけないんだろうなって、いまいろいろ模索しているところなんです」(伊澤) ――ぜひ、これからも“ちさまひ”をいつまでもスクリーンで見続けたいですが、年齢を重ねるにつれて、いまとは違う形の“限界突破”が必要になる局面も訪れるかもしれませんね。 伊澤「そうですね。今年30歳になるんですけど、20代の時と同じようなやり方をしていたらぶっ壊れるなっていうのが、今回の現場を経て身をもってわかったので(苦笑)。これからは身体の動かし方自体も変えていかなきゃいけないんだろうなって、いろいろ模索しているところなんです。いつまでやれるのかなんて自分でもわからないけど、もしこのまま40、50代…と歳を重ねていくとしたら、その時々の年齢に見合った戦い方をすればいいんだろうなとは思っていて。だって、すでに無理だもん。今回の動きをもう1回やるのは(笑)」 高石「それ、伊澤さん、ずっと言ってますよ」 伊澤「いまやれって言われても、あれはできない!」 ――それくらい、あの時持ち得るすべての力を出し切った、と。 伊澤「ですね(笑)。“超える”んじゃなくて、素敵に歳を重ねていきたいな、と(笑)」 ――とはいえ、近い将来、“ちさまひ”に海外出張の指令が下る日も来るのでは? 伊澤「わ~! ぜひ海外ロケしましょう!『KILL YOU!』って言ってみたい」 高石「“ちさまひ”が頑張って英語をしゃべってる姿って、なんだかおもしろそう」 伊澤「時代も自由に選べるとしたら、恐竜時代にタイムスリップしてみたいです」 高石「いいですね(笑)。『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』にあやかりましょう!」 取材・文/渡邊玲子 ※高石あかりの「高」ははしごだかが正式表記