「同じ名前なのでずっと気にして見ていた」GKとの運命的ユニ交換も経て…横浜FMポープ・ウィリアムが歩み始めた復活への道
[8.3 国際親善試合 横浜FM 2-0 ニューカッスル 国立] Jリーグのプロジェクトによって偶然組まれた国際親善試合で、遠くの地から一方的に見ていたはずの“同じ名前の守護神”と運命的な邂逅が実現した。 【写真】「ものすごいメンツ」…リバプール豪華3選手に囲まれたMF長野風花 横浜F・マリノスのGKポープ・ウィリアムは3日、Jリーグインターナショナルシリーズのニューカッスル戦に後半開始から出場すると、ピッチの向こう側には同じく後半出場のGKニック・ポープが立っていた。「POPP」と「POPE」。スペルこそは違えど日本語で同じ表記を持つ両守護神が、国立のピッチに揃い踏みした。 試合後には“ウィリアム”からの申し出で、ユニフォーム交換も実現した。 これには“ニック”も「(同じ名前だって)分かってるよ。知ってたよ」と快諾。報道陣の取材に応じた“ウィリアム”は「ずっとバーンリーくらいからプレーを見ていたし、同じ名前なので気にして見ていた。いつの間にか代表に入ったりもして、キャリアを重ねている姿は気にしていた。ユニフォームを交換できてよかったです」と笑顔を見せた。 そんなポープにとって、このニューカッスル戦は自身のキャリアを前に進める意味でも大事な一戦だった。 今季の加入直後から正守護神の座を確保し、クラブ史上初のAFCチャンピオンズリーグ決勝に導く活躍を見せたポープだったが、7月のJ1リーグ戦3試合は先発落ち。ACL決勝第2戦で一発退場処分を下され、アジア制覇を逃した心理的な影響もあったはずだが、何より3年ぶりのJ1リーグ挑戦とACLによる連戦が続く過酷なスケジュールが日々のリズムを狂わせていた。 連戦による身体的負荷は少ないとされがちなGKだが、不定期に試合が組まれることにより、トレーニングのルーティーンは大きく崩される。特に反射要素も含めたフィジカルの維持が大切なポジションだからこそ、慎重な調整が求められる。そのためポープは、このリーグ戦中断期間を「自分を見つめ直す機会」と位置付け、日々のトレーニングと向き合ってきたという。 「(シーズン序盤の)連戦連戦で少し歯車が狂い始めていたのは自分でも分かっていて、それを止められなかった。連戦が続いていく中では自分のトレーニングの負荷だったり、全部が全部自分の望んだ形にならないものだけど、ここまで試合をやりながら、きついトレーニングをやりながら進んでいくシーズンは初めてだったので、自分の中で少しずつ確信を持てずにプレーしていたことがあった。そこを少し時間をかけて整理して、もう一度自分のコンディションであったり、トレーニングであったり、自分のやるべきことに取り組めた時間だった」 奇しくもポープが欠場している間、チームではハリー・キューウェルからジョン・ハッチンソンへの監督交代が行われており、プレースタイルのテコ入れを実施中。そうした新たなトライも意識しつつ、ニューカッスル戦のピッチに立っていたようだ。 「ビルドアップで高い位置を取って、今までとはちょっと違う景色でチャレンジしてみたけど、相手が前に掴みに来ていたぶん、少し難しかったところもあった。入りのところは少しバタついたし、相手のプレッシャーもあった。いつもやっているより迫力があって、体のサイズもあったし、スピードも普段やっている相手と違ったので、少し馴染むまでに時間がかかった。僕自身、個人としてトライしていることはまだまだ精度を上げないといけない。チームでいろんなことが整理されてきているので、僕が出ている時にもう少しチャレンジすればよかったなという後悔もあった。ただ、チームとしてのいろんな形も少しずつ変わっていく中、チームとしてもポジティブにゲームを運ぶことができるようになってきたと思う」 対戦相手の特徴がJリーグの相手と異なることもあり、フィット感は道半ばの様子。しかし、冷静な口ぶりからは前向きなフィーリングも感じられた。また正守護神から立場が変わっても、トレーニングに向き合う姿勢を変えるつもりはない。むしろトレーニングと向き合えるこの期間を復活への良いきっかけに変えていくつもりだ。 「競争はどのチームにいてもあるし、僕がやるべきことは自分に矢印を向けて、自分の成長に向けてやるだけなので。試合に出ていようが出ていなかろうが、自分のやるべきことは変わらない。今回の中断期間はまだまだ自分の成長の幅を感じられた時間でもあったので、もっと成長するためにいろんなことにトライしながら、噛み砕きながらやっていかないといけないなと思います」 その現状には「少しずつ、いい感覚みたいなものが戻ってきた感覚もある」と手応えも示したポープ。「継続して少しでも高いレベルのパフォーマンスをできるように引き続きやっていきたいと思います」。クラブの歴史を大きく変えた守護神は苦境の中でも着実に前に進もうとしている。