糖尿病になると心臓病・脳卒中のリスクが2倍高まるのはなぜ?【医師解説】
糖尿病を発症すると、心臓病や脳卒中などの心血管疾患リスクが高くなるといわれています。しかし一体なぜ、それらのリスクが高まるのでしょうか? 予防法はあるのでしょうか? 地域・総合クリニック十日市場の布目先生に教えてもらいました。 【イラスト解説】糖尿病の先に待ち受ける恐ろしい合併症とは
糖尿病と心血管疾患の関係は?
編集部: 糖尿病になると心臓病や脳卒中のリスクがさらに高くなると聞きました。本当ですか? 布目先生: はい、本当です。なぜなら、糖尿病は動脈硬化を進行させる重大な要因になるからです。心臓病や脳卒中は動脈硬化を原因として発症することが多いので、糖尿病になるとそれらの発症リスクが高まるのです。 編集部: なぜ、糖尿病は動脈硬化を進行させるのですか? 布目先生: 糖尿病の人の体内ではインスリンが十分働くことができず、血糖を細胞のなかへうまく取り込めなくなります。 このようにインスリンが分泌されているにもかかわらず、作用が低下している状態のことをインスリン抵抗性といい、インスリン抵抗性が生じると、血液のなかに糖が大量に含まれた状態になります。 血液に糖が大量に含まれていると血液はドロドロになり、血管の壁を傷つけます。それにより血管の壁が厚くなり、動脈硬化が生じるのです。 編集部: 動脈硬化が起きると、心臓病や脳卒中になるのですか? 布目先生: はい。動脈硬化が起きると血管が狭くなったり、血の塊(血栓)で血管がふさがれたりすることがあります。こうした症状が心臓の血管で起きれば心筋梗塞や狭心症、脳の血管で起きれば脳卒中を起こします。 編集部: 具体的に、糖尿病になるとそれらの疾患を発症するリスクはどれくらい高くなるのですか? 布目先生: 心臓や血管に起きる病気のことを心血管疾患といいますが、研究によると、糖尿病患者が心血管疾患で死亡するリスクは、糖尿病でない人の1.8~2.5倍高まることがわかっています。 また、脳卒中の中でも血管が詰まるタイプの疾患を脳梗塞といいますが、糖尿病のある人はない人に比べ、脳梗塞を発症するリスクが2~4倍高いことがわかっています。 編集部: ずいぶんリスクが高くなるのですね。 布目先生: はい。それから、糖尿病があると心筋梗塞の発症率が高まるというデータもあります。心筋梗塞は一度起きると、再発しやすいという特徴がありますが、糖尿病があると、一度心筋梗塞を発症したのと同じくらい、発症率が高まるのです。