「裾野が広い」鯨産業、好循環の形をつくり出すクラスターが必要…下関市立大・岸本充弘教授に聞く
最新鋭の設備を備える関鯨丸の帰港により、これまでより質の高い冷凍鯨肉の流通が山口県下関市を拠点に始まる。市などは「鯨の街」として活性化を図りたい考えだ。今後への期待や課題を下関市立大の岸本充弘教授(捕鯨産業史・文化史、水産経済学)に聞いた。 【写真】関鯨丸の船尾にある「スリップウェー」から船内に引き揚げられるナガスクジラ
――現況をどう見るか。
下関市の官民組織の取り組みもあり、鯨肉料理を提供する飲食店が増えるなど飲食業界は一定の成果が出ているが、他の業界はそうとは言いがたい。今夏には老舗の水産加工・卸売会社が倒産した。鯨肉関係の取り扱いでは大手だっただけに衝撃だ。
――取り組みをどう進めるべきか。
鯨産業は造船、加工・流通、小売り・飲食店、鯨肉利用の研究開発など裾野が広い。まずは小さくていいので、関係者が参加し、産業の好循環の形をつくり出すクラスター(集団)が必要と考える。例えば、鯨の未利用部位の新たな活用法を打ち出し、成功例をつくる。その積み重ねは地域振興にもつながる。
――下関市でも「鯨肉離れ」が指摘されている。
市立の小中学校などでは給食で鯨料理も出されており、鯨食文化の伝承という点で意義がある。ただ、鯨肉は部位などによっては牛肉や豚肉より割高感がある。鯨肉を使ったハンバーガーのように、誰もが手軽に食べられる加工食品の開発・普及の促進が望まれる。