誰のおかげだと思ってんの?地主の父からの遺産10億円超の大部分を相続しようとする苦労知らずの〈2代目・50歳弟〉に不信感…20年間、遺産分割で揉めている〈55歳長女〉がついに動いたワケ【相続の専門家が解説】
不仲な姉弟が最終的に落ち着いた、20年前の決断
実の姉弟なのに双方とも相手を信頼できず、正直遺産分割は難航していました。しかし、時間がないことが幸いとなり、これ以上、争わない決断がされたのです。 真美さんの実印は父親が作ってくれたもので、納得いかない書類に押すわけにはいかないと決意していたようです。また、父親の事業を継いだだけで何の苦労もしていない弟に対しては、誰のおかげで今の自分があるか、しっかり自覚してもらいたいとも言ってました。ともに両親や家を思う気持ちは変わらないのに、本人達の溝は深いものがあると感じました。実の姉弟ですから、この先、わだかまりがなくなることを祈るのみです。
真美さんが20年かけて残してきた土地の懸念ー増額する「固定資産税」について
そうして20年が過ぎたわけですが、後妻さんは90代でまだご健在。二次相続はこれからになります。その件についても、姉弟の溝がどうなるか懸念が残るでしょう。 ですが今回はそれよりも、真美さんが更地で維持してきた土地について(特に年々増額する「固定資産税」について)悩んでいるようです。正直、更地のまま維持することは、メリットが少ないと言えます。 というのも、土地の固定資産税額は、評価額の1.4%として計算され、毎年1月1日時点の所有者に対し各自治体の固定資産課税台帳に登録されている人に課税されるものですが、建物が建っている土地の場合、200㎡までの土地に対しては住宅用の特例として「6分の1」に軽減されます。200㎡以上の土地は「3分の1」に軽減されます。 よって真美さんの土地の固定資産税は、建物を建てることにより、160万円から45万円程度に減額されることになります。 建物の固定資産税は当然増えることにはなりますが、家賃が入る賃貸住宅を建てると、その家賃収入から固定資産税を負担すればよいため、持ち出しにはなりません。
そのままで維持するよりも、賃貸住宅を建てるなど、固定資産税の減額の工夫が必要
真美さんが20年で負担した固定資産税は実に3000万円以上と、かなりまとまった金額になります。それを上回る駐車場収入があるから維持はできているのですが、それ以上のプラスにはなりません。 土地は建物を建てて住んだり、貸したりしてこそ、本来の価値がでると言えます。父親の土地を相続して維持する目的は達成できているとはいえ、そろそろ自分の財産として土地の価値を活かせるような活用が必要な時期になっているといえます。 方法とすれば、(1)賃貸住宅を建てる、(2)資産組替として売却し、別の立地に買い替える、(3)半分を売却して売買代金で賃貸住宅を建てる、などいくつもの方法が考えられます。これから真美さんにご提案して負担のない財産にしてほしいと切に思います。 ※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。 曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士 ◆相続対策専門士とは?◆ 公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。 「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
曽根 惠子
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