時価総額1兆円超え「すき家」「はま寿司」を運営するゼンショーの世界戦略のカラクリ。日本の外食産業が世界の胃袋を掴んだ「仕入れ力」とは
「すき家」「なか卯」「はま寿司」などを展開するゼンショーホールディングスは、2023年7月、日本の外食産業企業として初の時価総額1兆円超えを果たして話題となった。海外進出も順調で、現在は海外店舗数が1万店規模となるのを達成。今年に入ってからもその勢いはとまらない。いったいなぜ、ゼンショーホールディングスは世界で戦えているのか。フードアナリストの重盛高雄氏に話を聞いた。 【画像】ゼンショーが世界で650店舗以上を展開するチェーンブランド
時価総額1兆円超えを達成できたカラクリ
『すき家』『なか卯』『はま寿司』『ココス』『ロッテリア』――。 これらはすべてゼンショーホールディングス(以下、ゼンショー)のブランドである。 料理ジャンルを問わず事業を展開しているゼンショーの時価総額は1.04兆円(3月20日現在)。2024年3月期上期(第2四半期)決算説明資料によると、当期純利益は前年同期比伸び率2.1倍の157億円となっていた。さらにゼンショーは海外事業を伸ばし、今月には海外に展開する店舗数を1万店規模にまで拡大している。 まずは、ゼンショーがどのように企業成長を遂げたのか、話を聞いた。 「ゼンショーはすき家や、はま寿司を立ち上げて人気チェーンに育てあげていますが、現在はすき家のようにプライベートブランドを一から立ち上げて成長させていくというよりは、M&Aに力を入れて企業成長を遂げています。最近では昨年2月にロッテリアを買収し、洋食、和食などの料理ジャンル問わず、各事業できちんと売り上げを稼げるブランドをチェーン展開しています」(重盛氏、以下同) たしかにロッテリアやココスは、もともとゼンショー系列だったというイメージはない。 「急成長をみせるゼンショーの一番の強みは、『仕入れ力』にあります。魚類であれば船ごと買い取ったり、肉類や野菜類は農地ごと契約したりと、圧倒的な仕入れ力を誇っています。生産者としては、納品できない食材はいままでお金をかけて廃棄していたわけですが、『この船のどんな漁獲でも、この畑のどんな作物でも引き受ける』というゼンショーの姿勢は、食材のロスをなくせるため、生産者側にも利益があるといえます。 グループが大きくなるほど消費力も上がり、生産者や加工業者にも利益をきちんと分配できるようになるという好循環を生み出せているといえるでしょう。 ちなみに、ゼンショーはさまざまな料理ジャンルのブランドを混成して展開しているので、仕入れた食材のクオリティに合わせて自社内で卸先を選べるという点も強みとなっています。 一例ですが、ステーキ店で卸すにはグラム数が足りない肉でも、挽肉にしてハンバーグ店に卸したり、牛丼店のお肉として提供したりすることが可能なのです。グループ成長のために必要な企業を引き込んでチェーンマネジメントができる、さらに卓越した経営力と仕入れ力、そして多岐にわたる卸先の数により、ゼンショーは目を見張るような成長を遂げたのです」