日本で“フィリピンはしか”の流行か/例年より多い患者数
春から夏が流行の季節とされる「麻しん」(はしか)が、今年は例年以上に増えている。国立感染症研究所などによると、今年6週目(2月9日)までの患者数は83人と、昨年同期の27人の3倍の勢いだ。昨年末からの特徴として、海外でウイルスに感染し、持ち込まれた輸入例が増加し、特にフィリピン型のウイルスの感染が多いという。 【図表】年齢によって違う風疹の予防接種状況 同研究所の感染症発生動向調査によると、2014年第1~6週(13年12月30日~14年2月9日)に報告のあった都道府県別患者数は、最も多いのが京都府の20人、千葉県10人、神奈川・愛知県8人、埼玉県7人、東京都6人、広島県5人などとなっている。患者の年齢割合は、0~9歳が49%と半数を占め、20~29歳22%、10~14歳13%の順だ。 これだけ見ると、京都府が突出しているかのようだが、昨年1年間(計232人)では東京都の67人をはじめとする関東1都3県で計148人、愛知県24人、大阪府15人、京都府9人、兵庫県8人、静岡県7人などと、すでに他地域での発生が先行していたのだ。
“土着ウイルス”に代わり出現
麻しんの国内の患者数は2008年には、10代を中心に1万人以上にのぼったが、その後大きく減少し、以前流行していた国内常在の“土着ウイルス”は2010年を最後に検出されていない。近年は乳幼児のワクチンの接種率も95%と高く推移しているため、国も2015年には世界保健機関WHOによる“麻しん排除”認定の取得を目指しているが、それに影響しそうなのが、外国から持ち込まれる麻しんウイルスだ。 13年第48週(11月17日)から今年第4週(1月26日)までの61人の麻しん患者のうち、国内でウイルスに感染したのは37人(61%)で、国外が24人(39%)だった。国外での感染先はフィリピンが17人、スリランカ2人、インドネシア2人、グアム島1人、インド1人、オーストラリア1人と報告され、フィリピンが最多だった。 世界の麻疹ウイルスはA~Hまでの8 群23 の遺伝子型に分類されおり、2006~08年の流行時には遺伝子型D5(バンコク型)のウイルスが主流だった。このD5型ウイルスが現在、日本に常在している“土着ウイルス”で、10年の1人(千葉)を最後にD5型は検出されていない。ところがD5型に代わって海外に由来する他の遺伝子型のウイルスが増えてきているのだ。 13年48週~今年4週の患者61人で遺伝子型別が判明した24人のうち、フィリピン由来のB3型が22人、他はともにインドネシア由来のD8型とD9型だった。このB3型は主にアフリカで流行が見られていたものが、13年以降はフィリピンで大きな流行が見られている麻しんウイルスだ。WHO西太平洋地域事務局によると、同年のフィリピン国内での麻しん患者数は死亡26人を含む2417人にも上っている。 このように麻しんウイルスについては最近、海外渡航歴やそれに関連する症例が増加し、感染性がある期間に航空機に搭乗していたと考えられる症例も複数報告されている。フィリピンをはじめとするアジア、オセアニア地域で麻しんウイルスに感染するリスクは非常に高くなっており、今後さらに海外渡航者による輸入麻しん例の増加、国内での二次感染の可能性が危惧されている。