「アメリカ二大政党制の岐路」(2)民主・共和両党の「リベラル」「保守」分極化 上智大学教授・前嶋和弘
「民主党=北東部やカリフォルニアのリベラル派」「共和党=中西部・南部の保守派」と地域的にも、イデオロギー的にも大きな差が出ていきます。ここ数年、この差がかつてないほどに広がった結果が、政治的分極化に他なりません。
政治的な「選挙区割り」改定
また、下院における「選挙区割り」の問題も政治的分極化を推し進める要因になっています。上院議員は50州からそれぞれ2人ずつ計100人が選出されます。下院の方は総435議席のうち、各州から最低1人は選出されますが、残りの議席は10年ごとの国勢調査に基づいて人口比で調整します。その調整の方法ですが、州ごとに議席の増減を伝えた後は、各州議会が決めることになっています。 ただ、この選挙区割り改定がとても政治的です。というのも、改訂の際、それぞれの州議会で多数派を取っている政党が、自分たちの支持層が多い地域を選挙区にしようと、へんてこな形の選挙区を作ったり、場合によっては「飛び地」を作るケースが頻発しているためです。いわゆる「ゲリマンダー」そのものであり、2000年、2010年の国勢調査の結果を受けた選挙区割り改定については、あまりにも党派的だったとして、訴訟が相次ぎました。「ゲリマンダー」に近い選挙区の政治イデオロギーは極端な保守か極端なリベラルかのいずれかになることが多いです。そんな選挙区で選ばれた議員は、当然ながら、自分の政党の中でもイデオロギー的であり、対立党との妥協を許さないタイプになっていきます。
メディアを通じた「見せる政治」
さらに、政治そのものがより劇場的になっていることも政治的分極化の一因となっています。1980年代のレーガン大統領のあたりから、テレビなどのメディアを通じて国民に直接に訴えて世論の支持を取り付けることで議会の対立党を動かそうとする「ゴーイング・パブリック戦略」が一般的になります。一方、議会の方も、テレビのスクリーンの向こう側にいる支持者に向けて、大統領やその党を強く非難するようになりました。当時のクリントン大統領や民主党を強く批判した、第104議会(1995年1月から1997年1月)でのニュート・ギングリッチ下院議長(共和党)が代表的です。