「これから給料はPayPay払いだ!」社長の鶴の一声に社員困惑、デジタル給与化でいいことはあるのか?
「これから給与はデジタル払いだ!」と突然言い出したベンチャー企業の社長。できれば対応したくないと考える経理部長だったが、社長は一度言い出したら聞かないタイプ。困って相談した相手は、歯に衣着せぬ物言いで相談者に愛のムチを入れる、ちょっと風変わりな社労士のカタリーナ。相談者に対してカタリーナがしたアドバイスとは……。 【この記事の画像を見る】 <登場人物> 星野社長(31歳):ベンチャー企業の若手経営者 永田部長(43歳):大手企業から転職してきた経理部門のトップ 元木(25歳): 経理部門の社員 ● うちの会社も、デジタル給与にしようよ ある日、星野社長が外出先から戻るやいなや、経理部門のデスクに駆け寄ってきた。 星野社長 「永田さん、うちもデジタル給与にしようよ」 永田 「何ですか、唐突にデジタル給与って……」 星野社長 「ほら、給料を電子マネーとかで払うやつだよ。ニュースで見たでしょ?PayPayが年内から始めるそうじゃない」 永田 「いやぁ、そうは言っても給与ですからね……やっぱり銀行振り込みが一番安心じゃないですか?」 星野社長 「そんなことないと思うけどなぁ。僕は基本、現金を持ち歩かない主義だし。みんなも電子マネーを利用してるんじゃない?」 永田 「私はどうも、その手のものが苦手で……」 2人の話を聞いていた元木が口を挟んできた。 元木 「社長、実は僕も気になっていたんです。デジタル給与、便利そうですよね。とても興味があります」 星野社長 「でしょ?ということで永田さん、よろしく頼むよ」 永田 「えっ、ちょっと待ってください!」 社長は軽いノリで次々と新たなミッションを与えてくる。永田は「面倒な仕事が増えるだけだ」と、深いため息をついた。
● 賃金のデジタル払いとは? そうは言っても、社長の言葉を無視するわけにもいかない。困った永田は、社労士のカタリーナに相談することにした。 カタリーナ 「こんにちは!社労士のカタリーナです。今日はどんなご相談かしら?」 永田 「早速ですが、デジタル給与について相談させてください。急に、うちの社長が当社でも導入したいと言い出しまして……正直、面倒な仕事は増やしたくないんですよね」 カタリーナ 「賃金のデジタル払いね。PayPayが初の資金移動業者に指定されてから、問い合わせが増えているようね」 永田 「社長の思い付きでやりたいと言われても……。私は普段からナントカペイみたいな、はやりの電子マネーは利用していません。定期券があるからSuicaくらいは時々使いますが。クレジットのタッチ決済で十分じゃないですか?」 カタリーナ 「まぁ、気持ちは分からないわけではないけれど。クレジットカードは審査があるから、誰でも持てるわけじゃないわよね。それに外国人にとっては、クレジットカード以前に銀行口座を開設するのもそう簡単じゃないでしょ?電子マネーなら口座の開設も簡単だし、現金を持ち歩く必要もないからますます広がっていくんじゃないかしら」 永田 「でも、災害とかシステム障害で使えないこともあるし、事前にチャージするのも手間でしょう?」 カタリーナ 「賃金のデジタル払いが可能になれば、チャージする手間も省けるわ。ただ、利用できるのは厚生労働大臣が指定した資金移動業者に限られるけど。今審査中の事業者もあるから、選択肢はこれから増えていくわね」