【鹿児島・沖縄の糖業―迫られる変革】 島外人材頼み強まる沖縄
今冬操業から残業の上限規制が適用される鹿児島、沖縄両県の製糖業。関連法施行後5年の猶予があったとはいえ、この間もさまざまな環境変化への対応に追われた。共通するのは働き手の減少と人材獲得競争の激化。とはいえ法が求める規制基準は順守しなければならない。各島、各事業者それぞれ地域事情も勘案しながら準備を進めてきた。 2県の製糖24工場(鹿児島7、沖縄17)のうち、働き方改革が政治課題として浮上した2017年時点で、3交代制は鹿児島5、沖縄1の計6工場のみだった。2交代の工員は、24年度から違法となった「月残業100時間以上」は当たり前。残業や休日出勤の割り増し(時給で25~50%増)を目当てにした就業者は少なくない。が、それでは工場を動かせなくなった。 今年7月中旬から8月中旬にかけて、両県の製糖事業者に今冬の勤務シフト予定を聞いた。別表の通り、24工場のうち、3交代は13工場、2交代は11工場。17年に比べ、3交代が7工場増えた。2交代を維持する工場も、季節工の採用を増やしたり、製糖期間を延長するなどして、工員1人当たりの月残業時間を減らす取り組みを進めている。 ただし、余裕のある工場は皆無。大半が法基準をクリアする方策を模索している状態だった。地元での季節工確保が厳しさを増し、外国人を含む島外人材に依存する傾向が強まっている。 北大東製糖は、3班体制で1日12時間勤務の「3直2交代」を前期実証し、来期もそれを継続する。北大東事業所長は「3直3交代にすると、季節工の残業代がかなり減る。それも考慮して、休みを増やしつつ残業を上限内に収める3直2交代にした。それでも残業代は従来比で2割程度減る」と話す。 今冬に向けては「(9月に決まる)新たな最低賃金も勘案して条件を決め、募集する。沖縄全体で賃金は上昇傾向。見劣りしない条件を提示する必要があるだろう」。前期の季節工70人。ほぼ全員が島外者で、23人は外国人。事業所長は「継続して来てくれた季節工は年齢層が高くなっている。外国人はもっと増えていくだろう」と見通した。 宮古製糖は宮古、伊良部、多良間の3島で粗糖2工場、黒糖1工場を操業。総務部長によると、3工場で社員123人、季節工は外国人8人を含め100人余。前期は社員で3交代を試行し、季節工は2交代を維持した。総務部長は「来期は季節工も3交代にする方針だが、できるかどうか読めない」。 必要となる季節工は1・5倍の約150人。総務部長は「人材は派遣会社にお願いすることになりそうだが、働き手以上に住居の確保が見通せない。宮古島は観光需要が堅調で、アパートの稼働率99%。家賃も賃金も上がっている」。 沖縄では内閣府の沖縄製糖業体制強化対策事業(国8割補助)を活用した季節労働者向け宿舎の整備が進んでいる。施設は自治体所有、製糖工場管理。沖縄振興局農林水産部生産振興課によると、21年3月の「伊江村農業従事者等宿泊施設」を皮切りに、今春までに計8島8施設が完成した。事業は働き方改革対応が主目的で、23年度で終了。現在、繰り越された2島2施設を建設中。 全個室。伊江、伊是名、北大東、小浜、与那国、西表、伊平屋、波照間、粟国、多良間の10島で計約500室。完成済み8施設は、前期製糖期での稼働率100%。伊江島施設(バス・トイレ、キッチン付きのワンルームタイプ26室)を管理するJAおきなわ伊江支店の友寄孝明・加工部長(伊江村黒糖工場工場長)は増設を願う。「地元の季節工は高齢化で少なくなっている。外国人を含め島外からの季節工を増やして行かざるを得ないだろう。そのために、欲を言えばもう1棟」