「燕は戻ってこない」「東京貧困女子。」…東京での“生きづらさ”描くドラマが話題 それでも上京する背景とは
東京を舞台として、女性の貧困や現代の孤独と社会の不条理を描いたWOWOWの連続ドラマ「連続ドラマW 東京貧困女子。-貧困なんて他人事だと思ってた-」(2023年)、そして同じく、東京を舞台に女性の貧困と生殖医療ビジネスの倫理の物語が展開するNHKの連続ドラマ「燕は戻ってこない」(毎週火曜午後10時~、7月2日最終回)。 【平均年収ランキング】上場企業ずらり…圧倒的1位の企業は「1657万5000円」 TOP10公開! 東京で生き抜こうとする女性たちの苦悩をリアルに描いたドラマが次々と放送され、自身に照らし合わせながら、視聴している人もいるのではないでしょうか。本記事では「連続ドラマW 東京貧困女子。-貧困なんて他人事だと思ってた-」と「燕は戻ってこない」における女性の描かれ方を見た上で、なぜ東京に多くの人たちが集まるのか考えていきます。
「東京貧困女子。」「燕は戻ってこない」…東京で暮らすための“プラスアルファ”
東京を舞台にしたドラマでは、登場人物の女性が、キラキラしたオフィスでバリバリ働き、恋もおしゃれも一生懸命……という作風を思い浮かべるのではないでしょうか。このような作品を地方で見ていると、東京には夢があり、上京すれば仕事も恋もおしゃれも…と期待がふくらむのではないでしょうか。しかし、当然のことながら、東京にはキャリアを順調に築き上げている女性ばかりが存在するわけではありません。 近年、東京の片隅でつつましく暮らす女性の生き方に焦点を当てたドラマが話題を集めています。俳優の趣里さん扮(ふん)する「東京貧困女子。」の主人公・雁矢摩子は出版社の契約編集者として働くシングルマザーで、経済的に余裕がありそうな友人をうらやましく思いながら、自身が貧困のボーダーラインにいる女性でした。本作では、風俗で働く女子大生、DVやパワハラなどを経験した女性たちも登場し、苦悩する心情が描かれました。 「燕は戻ってこない」は、代理母の問題を扱った作品ですが、作品の根底には貧困問題があります。俳優の石橋静河さん演じる主人公の大石理紀(リキ)は、北海道で介護施設や古着屋で一生懸命働きながらお金をためて、上京することで自身の変化を期待していたものの、現実は甘いものではありませんでした。同作でリキが「東京に来ても駄目でした。こっちだとプラスアルファの何かがないと駄目だったんです」と口にしながら、東京で生まれ育った人と、地方出身者の格差を訴えるシーンがありました。 リキは、自宅付近の病院で受付事務としてフルタイムで働いても手取り14万円前後。古びたアパートで暮らし、コンビニでサラダを買うのも厳しい懐事情です。経済苦から逃れるため、迷った末に代理母に応募しました。 リキが話すように東京で成功するには“プラスアルファ”の何かが必要なのかもしれません。他の人よりも優れた学歴や美しい容姿があれば文化やトレンドの中心地でもある東京を謳歌(おうか)できる可能性が高いと考えられますが、プラスアルファのものを持つ人はほんの一握りではないでしょうか。また、リキが話すように、首都圏に実家がある人であれば、14万円前後の手取りでも貧困を実感しにくいかもしれません。リキのように地方出身の普通の女性が現状を変えることの難しさについても考えさせられます。 さらに本作では、プラスアルファの何かを手に入れようとする努力を問うセリフやラグジュアリーなレストランでの食事シーンなど、経済苦に陥っている人とプラスアルファの何かを持っている人が、相いれがたい様も描かれました。