イスラム教「スンニ派」と「シーア派」違いは何?
シリア内戦や過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭など、イスラムが話題になることが増えるにつれ、スンニ派とシーア派という言葉を耳にすることも多くなりました。これらはイスラムの宗派ですが、どう違うのでしょうか。 【写真】「イスラム国」はなぜ国家ではないのか?
■スンニ派=コーランやハーディスを重視
ムスリム(イスラム教徒)の人口の約90パーセントはスンニ派です。 「スンニ」とは、イスラムを広めた預言者ムハンマドの「慣行」、つまりどのように行動したか、どのような判断をしたか、という意味です。スンニ派にとっての信仰の拠り所は、ムハンマドが神から預かったとされる言葉を記した「コーラン」と、ムハンマドのスンニをまとめた「ハディース」です。
イスラムの大きな特徴は、その教えの中に、個人の信仰と社会のルールの両面があることです。そのため、イスラムの教えにのっとった法律、イスラム法というものがあります。 スンニ派の場合、イスラム法の根拠になるのは、まずコーラン。そしてハディースです。それから、コーランやハディースに詳しいイスラム法学者が、その内容から神の意思を論理的に読み解く「類推」と、その「類推」が多くのムスリムに受け入れられる状態である「合意」も、スンニ派ではイスラム法の根拠とされます。 ムハンマドの死後、その後継者(カリフ)が信者たちの間から選ばれました。カリフは信者たちのリーダーですが、コーランやハディースを解釈したりする権限はありませんでした。スンニ派の考え方では、コーランやハディースに従っていれば、リーダーは誰でもよい、となります。例えば、サウジアラビアはスンニ派の一派ワッハーブ派が国教の厳格なイスラム国家ですが、世襲の王政です。これも、この考え方から認められているのです。
■シーア派=血脈が宿るリーダーを重視
一方、少数派のシーア派は、主にイランに多い宗派です。 シーア派は、もともと第4代カリフのアリーを支持し、「シーア・アリー」と呼ばれた信者たちです。その後、「アリー」が省略され、「派」や「党」を意味するシーアだけが残りました。 シーア派はイスラム法の根拠として「類推」や「合意」を認めていません。それは、もともと人間は不完全なもので、寄り集まっていろいろ知恵をしぼって、その結論が多くの信者に受け入れられたとしても、それが神の意思に適っているとは限らない、という考え方があるからです。 そんなシーア派にとって重要なのは、「絶対に間違いを犯さないリーダー」です。そこでシーア派は、ムハンマドがもっていた特別な人間としての資質が、ムハンマドのいとこで娘婿だったアリーをはじめ、各時代に一人のイマーム(導師)に、その血脈を通じて宿ると考えるのです。シーア派にとっての最高指導者はイマームです。