早稲田実業、延長戦の末に大森学園に競り勝つ
令和6年度全国高校サッカーインターハイ(総体)東京予選の1次トーナメントは5月19日、14ブロックの各決勝が行われ、5月25日に始まる2次トーナメントに進出する20校が出そろった。 【フォトギャラリー】早稲田実業 vs 大森学園 プリンスリーグ関東1部の帝京と同2部の國學院久我山、関東高校大会予選を制した大成、同準優勝の日大豊山は2次トーナメントからの登場となる。決勝に進んだ2校がインターハイ(7月27日~8月3日・福島県)の出場権を獲得する。 D組は、昨年度の第102回全国高校選手権に東京B代表として初出場した早稲田実業が、大森学園に延長の末2-1で競り勝った。 3-5-2の早稲田実業は、昨季のチームでは2トップの一角を担った竹内太志(2年)をボランチで起用。左ウイングバックで全国選手権に先発した主将のスミス聡太郎(3年)もボランチとして、攻守のかじ取り役を担った。 4-4-2の大森学園は昨秋の全国高校選手権東京B予選ベスト8で、準々決勝で準優勝した修徳に1-2の惜敗。Jリーグの横浜マリノスや清水エスパルスなどでプレーした安永聡太郎氏が、コーチとして指導陣に名を連ねる。 前半は早稲田実業がいくらか押し気味に試合を進める展開ながら、それほど多くの得点機会があったわけではない。23分にFW霜田優真(2年)が左から打ったシュートはDFにブロックされ、37分から4本立て続けに右CKを獲得したが、決定的な形にはならなかった。 ともに決め手に欠いて0-0で前半終了と思われたが、アディショナルタイムに入った直後だった。 早稲田実業は左ウイングバック千本木亮磨(2年)の蹴った左CKが混戦となり、出足良く拾った霜田が鋭い一撃でネットを揺らし、願ってもない時間帯に先制した。 しかし後半の早稲田実業は長いキックの精度に欠き、敵の急所を突く崩しのパスもほとんど配給できずに苦戦。18分に霜田が左から放ったミドルシュートくらいしか可能性がなかった。 反対に大森学園はリズムを取り戻し、ポジションを変えた選手や交代出場した面々が躍動感する。左MFで先発し、右SBに移った川越颯(2年)は旺盛な攻撃参加を繰り返し、途中出場で右MFに入った朝倉陸空(3年)と後半途中から左MFで起用された坂口昂樹(2年)も、積極的に敵陣へ顔を出した。 6分にFW増子翔音(2年)が惜しいシュートを放てば、主将のMF高橋元翔(3年)は25分と26分に続けて際どいシュートをお見舞いし、相手守備陣を揺さぶった。 そうして残り時間が少なくなってきた36分、ボランチ小幡駿之介(2年)の絶妙な右クロスを坂口が合わせて起死回生の同点ゴール。 1-1で80分を終え、延長戦へともつれ込んだ。 後半は攻め手に欠いた早稲田実業だったが、延長前半9分だ。CB前田竣汰(2年)が左からアグレッシブに攻撃参加し、鋭いクロスをゴール前に供給。中列後方から上がってきた竹内が、相手DFの背後から飛び出して最終パスをヘッドで押し込み、決勝ゴールをものにした。 正規の後半の終盤はピンチが続いたが、延長後半は手堅い守りを貫き2-1で逃げ切った。 中学でボランチだった竹内は、高校に入学した昨年からFWに転向したが、この日は初めてボランチでの先発を告げられた。「監督さんからはボールをしっかり保持し、後ろを安定させるためと言われました」と説明し、「でもあのシーンは点がほしかったので夢中で攻め上がりました。うれしいです」と汗を拭いながら、晴れがましい表情で答えた。 昨季の主力がごっそり抜け、この日の登録メンバーで全国選手権を経験したのは先発組がスミスと竹内で、途中出場がDF野川一聡(2年)とMF松下岬(3年)だけだ。 就任25年目の節目のシーズンを迎えた森泉武信監督は、「1年生が先発、交代出場とも2人ずつという台所事情です。こういうケースは珍しく、昨年のようにはいきませんね」と苦しいチーム情勢に苦笑いした。 昨年は1次トーナメント1回戦で姿を消したが、今大会は持久戦を制する粘り腰を発揮して2次トーナメント進出。竹内は「今年は個々の力が高くありませんが、きょうのように苦しい流れになっても声掛けと高い集中力でインターハイ出場を狙いたい」と明確な目標を口にした。ベテランの森泉監督は「1パーセントでも勝つ可能性があるなら、いかなる形でも試していきたい。これからはもっと(戦い方の)引き出しを多くつくろうと思います」と話し、2次トーナメントでの戦略については「相手と一つ一つ駆け引きしながら、チームのプラスになる戦いをしたい」と遠望した。 (文・写真=河野正)