《ブラジル記者コラム》 1千団体ひしめく日系社会の今=知られざる鳥居大国ブラジルの謎
実は全国に150基以上もある鳥居大国
現役総理大臣として8年ぶりに岸田文雄氏が来伯する機会に、改めて「日系社会の今」をまとめてみたい。 「ブラジル」といえばサッカー、サンバ、アマゾンとのイメージが強いだろうが、実は鳥居大国でもある。サンパウロ人文科学研究所が2018年に発表した日系団体調査(1)では少なくとも150基以上ある。しかも大半にはお社(やしろ)がなく鳥居だけ。なぜそんなにあるのか―。 日本国外務省は4月、世界の日系人口は500万人で、うちブラジルが過半数で270万人と発表した。戦前戦後合わせた日本人移民数は25万人と言われており、1908年の移住開始から116年で10倍以上に。世代的には6世が20歳を超えて、いつ7世が誕生してもおかしくない。 同調査によれば全伯に地方日系団体は436あり、その総元締めがブラジル日本文化福祉協会(石川レナト会長)だ。うち255団体(58%)がサンパウロ州にあり、サンパウロ市内だけで44(10%)。2番目はパラナ州の77(18%)、3番目はマット・グロッソ・ド・スール州で23(5%)、リオ州19、ミナス州12、バイア州10、サンタカタリーナ州9、パラー州6。 会館を所有する地方団体は90%。所有地の合計は19キロ平米。日本で言えば全791市の744番目に大きな兵庫県芦屋市、18・5キロ平米より広い。 多くの地方文協は日本語学校を経営する。国際交流基金の2018年度調査によれば、全伯に日本語学校は380校ある(2)。こうした日本語学校をまとめる組織としてブラジル日本語センターがある。
これらを代表する組織が「5団体」だ。ブラジル日本文化福祉協会、病院を経営して職員を3600人も持つ最大の日系組織であるサンパウロ日伯援護協会(援協)、世界最大級の日本文化イベント「日本祭り」を実施するブラジル日本都道府県人会連合会(県連)、日伯文化連盟(アリアンサ)、ブラジル日本商工会議だ。 ブラジル日本商工会議所の加盟企業数約350社のうち、日本からの進出企業は200社余りと言われる。参加していない進出企業を含めれば、600社はあるかも。現地の日系人経営の企業はそれ以上に多い。会議所もサンパウロだけではなくマゾナス州都マナウス、パラー州都ベレン、パラナ州都クリチーバ、リオ・デ・グランデ・ド・スール州ポルト・アレグレ、リオ州にもある。 中でも特徴的なのは県連で、世界で唯一47都道府県全部の県人会組織がそろっている。一番規模が大きいのは沖縄県人会で約30支部がある。 各県人会が自慢の郷土芸能や郷土食を持ち寄る形で毎年7月に日本祭りが開催されている。3日間で約20万人の有料入場者があり、今ではアニメや漫画などのJpopカルチャーまで楽しめるイベントとなり、今年は第24回目を迎える。