《ブラジル記者コラム》 1千団体ひしめく日系社会の今=知られざる鳥居大国ブラジルの謎
戦後は、作家の北杜夫氏がブラジル日本移民の歴史を描いた長編小説『輝ける碧き空の下で』を新潮社から1982年に第1部、1986年に第2部を刊行。同年日本文学大賞を受賞した。 垣根涼介氏は〝緑の地獄〟に入植したアマゾン移民の無念を、エンタメとして昇華したクライムノベル『ワイルド・ソウル』を2004年に発表し、第6回大藪春彦賞、第25回吉川英治文学新人賞、第57回日本推理作家協会賞の三冠を制した。 最近では葉真中顕(はまなかあき)氏が、終戦直後に日本移民を二分した「勝ち負け抗争」を題材にした小説『灼熱』を発表し、2022年に第7回渡辺淳一文学賞を受賞。さら今現在、水村美苗氏が月刊文芸誌「新潮」で、南米の日本人移民に関連した小説「大使とその妻」を連載中だ。
移住団体、進出企業、病院、福祉団体、農協
移住関連団体で現在も活動しているのは、移民の送り出しを行った「力行会」。「コチア青年連絡協議会」は、日本の全国農業協同組合連合会が農家の二男三男をブラジルに送り出し、コチア産業組合中央会が引き受け団体となって海を渡った2508人のOB会だ。 「南米産業開発青年隊協会」は日本の建設省が作った産業開発青年隊制度によって、農家の二男や三男が建設や土木の専門技術を身に着ける制度で、326人が南米まで派遣された。他に「工業移住者協会」「外務省研修生」「東山研修生」などいろいろある。 「日系病院」として一番規模が大きいのが援協の日伯友好病院。皇室の御下賜金も受けて1939年に落成した最も伝統あるサンタクルス日本病院、アチバイア市のノーヴォ・アチバイア病院、パラナ州クリチーバの杉沢病院、パラー州ベレンのアマゾニア病院などもある。「福祉施設」は援協(あけぼのホーム、さくらホーム、サントス厚生ホーム、イッペランジア・ホーム)、憩の園、子供の園、希望の家、和順会老人ホームも。 日系農協は、南米最大といわれたコチア産業組合や、南ブラジル農業組合などの中央会が90年代につぶれた後に低迷。だが現在も、アマゾンで生産したカカオを明治製菓に納めているトメアスー農協、インテグラーダ農業協同組合、バルゼア・アレグレ農牧協同組合、パウリスタ柿生産者協会など10団体ほどある。