どんな投資信託を選ぶと良い? プロが解説する「50歳からの新NISA」
こんな投資信託は買ってはいけない
逆に、買ってはいけない投資信託もあります。例を挙げましょう。AIやSDGs、メタバースのように特定のテーマに集中投資した投資信託は、買うべきではありません。株式市場において、テーマというものは長続きしないからです。 過去を振り返れば、1990年代の後半から2000年にかけて、「IT関連投資信託」が数多く登場しました。そして、ITバブル崩壊とともに大暴落しました。IT自体はその後も進化を続け、私たちの生活に浸透して、生活を豊かにし続けていますが、IT関連企業の株価は暴落したのです。 また、高額分配を売りにしている投資信託も、資産形成に向いていません。分配金を支払うよりも、そのお金を運用し続けるほうが、資産形成の効率がいいからです。 例えば、100万円を年5%の利回りで運用できると、1年後には105万円になります。ここで、5万円を分配金にすると、2年目も100万円からのスタートです。同じく5%の利回りなら、2年目の終わりにはまた105万円になります。1年目の分配金と合計すると100万円です。 しかし、分配金を出さず、2年目は105万円からスタートして、年5%の利回りなら、2年目の終わりには110万2500円になります。分配金を出す場合よりも2500円多くなるわけです。 信託報酬(投資信託を管理・運用してもらうための経費)が高い投資信託も避けるべきです。信託報酬が高いからといって、リターンが大きいわけではありません。 とはいえ、信託報酬は安ければいいというものでもありません。投資信託の運用にはコストがかかるからです。 運用している会社やファンドマネジャーの考え方などに共感できれば、そのコストをまかなうために、ある程度の信託報酬はかかるものと心得ておきましょう。 それにしても、合理的とは思えないほど信託報酬が高いものは、選ばないようにしましょう。
日々の値動きを気にせず、20年後の資産形成を
ここまで、積立投資をしようという話をしてきましたが、「余裕があるなら、一括で投資をしてもいいのではないか」と思われる方もいるかもしれません。 大きな金額を一括で投資してはいけない大きな理由は、マーケットの動きが気になって仕方がなくなるからです。 マーケットは動くものです。極論を言えば、明日、持っている投資信託の基準価額が上がっているか下がっているかは2分の1の確率です。毎月積立投資をしていると、こうしたマーケットの動きに慣れてきて、精神的耐性が身につきます。 精神的耐性が身についていないうちは、基準価額が下がると手放したくなるでしょうが、ここはグッと我慢。売ると損が確定しますが、保有し続ければ、含み損は出ても、その損が現実となることはありません。 慣れてくると、積み立てている投資信託の基準価額が上がれば「資産が増えて嬉しい」と思うのはもちろん、下がったときも「資産が減った」ではなく「安く買えて嬉しい」と思えるようになります。 これを繰り返していると、平均の買付単価がいくらかも気にならなくなって、利益確定のために売却したいという気持ちも起こらなくなり、結果的に、長期投資が実現しやすくなります。 また、毎月定額で積立投資をすることを「ドルコスト平均法」といいます。この投資法は「基準価額が安いときは口数を多く、高いときは少なく買う」ことになるため、平均の買付単価を下げる効果があります。 50歳からの投資の目的は、20年後の資産を形成することです。目先の値動きが気になったときも、常にそこに立ち戻ってください。そして、新NISAを最大限に活用していきましょう。
中野晴啓(なかのアセットマネジメント(株)代表取締役社長)