ラグビーコラム フランス代表戦のスタッツに表れたエディー・ジャパン1年目の現状
【ノーサイドの精神】日本代表の欧州遠征は週末のイングランド代表戦で終了。年内の活動も終わる。今年のテストマッチはここまで10戦して4勝6敗(他にマオリ・オールブラックスと1勝1敗)。世界ランキングが上のチームに勝ったのは9月15日のサモア代表戦(当時日本が14位、サモアは13位)だけだ。 旗印とする「超速ラグビー」の成果はあったのか。12-52で敗れたフランス代表戦(11月9日、サンドニ)のスタッツに現状が表れていたように思えた。 オータムネーションズシリーズの主催者が公表している数値によると、この試合のポゼッション(ボール支配率)は日本が54%、フランスが46%。ゲインメーターは日本が782・1メートルでフランスが592・6メートルだった。これだけみると日本が優勢に進めたように思えるが、トライ数は日本が2、フランスは8だった。 「超速ラグビー」のコンセプトは、ボールと人を速く動かして相手が追いつけないうちにスペースをつくり、そこを突くというものだ。しかし、そんな日本のやり口は世界も分かってきた。超速封じのため、1対1のタックルで押し込み、ブレークダウンで圧力をかける。日本のボールラインを下げることで、密集戦は少ない人数でまかなえるようになり、立っているプレーヤーを多くしてスペースをつくらない。フランス戦直後、エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチは開口一番、「フランスのフィジカルにやられた」と話したが、フランスからすればしてやったりだったろう。 特にいけなかったのはタックルだ。タックル成功106に対してタックルミスが実に38。成功率73・6%は、テストマッチのレベルとしてはあまりに低い。FL下川甲嗣やHO原田衛らは口々に「コミュニケーションがおろそかになっていた」と話すが、局面局面で〝同じ絵を見る〟ところまで落とし込めていないというのが、現状なのだろう。 攻撃でも、CTBシオサイア・フィフィタが「急がなくていいのに急いでいる」と指摘したように、スペースが見つからないときに意思統一がなされず、あわててミスが起こる場面も多い。李承信、立川理道と2人のSOが離脱してからは顕著で、なんだか超速の呪縛にとらわれているようだ。 イングランドとは、6月22日の第2次エディー・ジャパン初戦で戦った。17-52で敗れたが、開始早々に自陣から展開戦を挑んで振り回して国立競技場のスタンドを沸かせ、李のPGでオープニングスコアを記録した。この試合より失点が多くなり、点差も開いてしまうようだと、1年目の日本代表には及第点はつけられない。(田中浩)