茨城の女医が考案した認知症「改善のためにできることリスト」を詳細初公開。薬なしでも認知機能はよくなる!
認知症の主症状は「認知機能の低下」、つまり記憶力、判断力、思考力などの低下である。主症状を抗認知症薬などの「薬」で何とかしようとする高齢者・家族が跡を絶たないが、実は生活習慣を変えるだけでも認知機能は改善が見込めるという。では、具体的にいまの生活のどこを変え、何を取り入れればいいのだろう。アプローチすべき生活習慣を調べあげ、100項目に及ぶリストを作成した茨城県の白土綾佳(しらど・あやか)医師に聞いてみた。 画像】「しすぎたらバカになるぞ…」母の再婚相手から性的虐待「すべてが壊れた日」 前編〈「私、病院キライなんです」と断言する女医が「病院らしくない医院」で行う“オープンな認知症診療”〉より続く。
抑制薬は「必要悪」。喜んで出しているわけではない
治療とは「なりふりかまわぬ総力戦」である……そう断言する白土医師は、クリニックのサイトでこのように書いている。 「当院は、薬剤投与など狭い意味での医療だけで問題が完結することに固執しません。専門医への紹介はもちろんのこと、食事や運動などの本人の取り組みや家族のケアへのアドバイス、信頼がおける介護サービスやスタッフとの連携、サプリメントにアロマセラピーの導入など。地域のあらゆるリソースを駆使して、ご本人が笑顔になればそれでよし。医療単独の成果ではなく、〈ご本人がよくなった〉〈家族が笑顔になった〉という結果にこだわるのが、町医者のプライドです」 (※あやか内科クリニックのサイトから抜粋) 白土医師は認知症においても薬物療法以外の手段を模索することに余念がないが、最も心強い“武器”であるはずの薬にこだわらないのは何故だろう。本人へのインタビューを続ける。 白土:患者さんが怒っている、暴れている、眠れなかったりするときに、家庭や施設であっても抑制系の薬(抗精神病薬)を使わざるを得なくなります(すでに本人に処方され、家族や介護職の手元にある場合)。 例としてピック病の患者さんが、クリニックから最大量(朝2錠、昼2錠、夜2錠)を処方されていた場合のことを考えてみましょう。そのような用量で服薬して、最初の数日間はとても穏やかに過ごせたとします。しかし、1週間も経つとボーッとしていることが多くなり、動かなくなったりします。 それでも“処方された薬だから”と飲ませ続けていたら、1ヵ月後に再受診したときには、お尻に大きな床ずれができて歩けなくなっていた、ということが起こり得るのです。このように高齢者は代謝が弱いので、同じ量を飲んでも薬が蓄積し、効き過ぎてしまうことがよくあります。 抑制系の薬剤は、医療者としても喜んで出しているわけではありません。背に腹は代えられないという感じでお出ししている事情があります。こうした薬を使わずケアの力だけで対応できればいいのですが、無理をするとご家族が疲弊して倒れてしまわないとも限りません。 私自身も高齢の男性介護者の方から「オレこのままだと、おっかあに恐ろしいことをしてしまうかもしれない」と言われたことがあります。抑制薬は必要悪であり、本人のためよりむしろご家族のために処方されます。ですから、どのくらいの量をいつ飲むか(飲ませるか)は、ご家族に判断していただくしかないのです。いつも傍についていることができない医師には、適量がわかりません。 東田:そこで大切になってくるのが、コウノメソッドを創った河野和彦先生(名古屋フォレストクリニック院長)が提唱する「家庭天秤法」ですね。介護者が観察にもとづいて副作用が出ないように主体的に薬の量を調節するという。 白土:そうです。